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放課後レッスン3
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(神田語り)
自分の耳を疑う。
いやいや、今はっきりと言われた。女ったらしの片桐先生に『付き合おう』と誘われた。あれは真面目な顔だ。
咄嗟に断わったけど、実はものすごく嬉しかったりする。今まで17年間生きてきて、そんなことを言われたのは初めてだからだ。
恥ずかしくて下を向いたまま暫し考える。
どうしよう。俺、これから何を言ったらいいんだろう。付き合ったら恋人になるのかな。
片桐先生とキスとかするのかな。
そ、それは困る……かも。
「そっか。神田は好きな奴がいるもんな。俺となんか付き合う気もないか。悪かった。冗談だと思って流してくれ。」
「えっ?ちょっと待って………」
好きな人はいるけど、その人は遠い存在な訳で、だったら近い存在でもいいかな……とか。牧村さんは見込みが殆ど無いに等しい。
「何、俺と付き合ってくれんの?」
俺が顔を上げると、片桐先生と目が合った。
片桐先生は、身長は熊谷先生と同じでも、外見は真逆だ。一見軽そうに見える熊谷先生とは違い、見た目のみ真面目に見える。
ストレートで癖の無い長めの黒髪に、アーモンド型の目は優しい雰囲気を纏っていた。
人当たりが良く、女子のみ人気で男子には嫌われていた。女子に甘いイメージがあり、俺もいい印象は持っていなかった。
だけど、放課後を一緒に過ごすにつれて、別に悪い人ではないというのは分かってきた。
勉強も教えてくれるし、意地悪もしないし、時田みたいにセクハラもしてこない。
女たらしなのは、よく分かった。女子生徒が訪ねてくることも数回あり、さっきの竹下先生ともきっと何かあるのだろう。下心が見え見えだった。
「あの……何で俺なんですか?先生は女に不自由してないんでしょう。俺、男だし。揶揄いなら止めてください。ホモって馬鹿にしてるんでしょう?」
決して自分がホモだと認めたわけではない。
今だけ偶々男の人が好きなだけだ。
「神田に興味があるからじゃダメかな。お前と付き合ってみたいと思ったから言ったんだけど。馬鹿になんて全くしてないよ。」
『お前と付き合いたい、俺に興味がある』とか殺し文句を平気で述べる。
やばい。これがプレイボーイってやつか。軽いな。だけど、格好いい。
心臓がドキドキしてきて、断る理由が思いつかなかった。
相手は教師だけどいいのかな。ふいに頭に葵さんの顔が浮かび、後押しされている気がした。やってみて無理そうだったら諦めよう。お付き合い、してみよう。
「………俺でよければ、お願いします。」
「うわ、本当に?じゃあ、今から神田は俺の恋人ね。よろしく。久しぶりに普通に付き合った気がする。」
意味深な言葉を言われ、ガシガシと頭を撫でられた。
で、この瞬間から俺と片桐先生と付き合うことになったのだが、俺は大切な確認事項を失念していた。さっき片桐先生は『疑似恋愛』と言ったことをすっかり忘れていたのである。
つまり……お互いに『好き』は存在しないところからのスタートだった。
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