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放課後レッスン6
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(片桐先生語り)
我ながら悪ふざけが過ぎたと思う。
大人のくせに卑怯な真似しやがってと言われてもしょうがない。10歳以上年の離れた生徒を試すような大人気ない行動を取ってしまった。
「…………神田、こっち見ろ………」
「……んっ……」
目をぎゅっと瞑り、何かに耐えているような神田の頰に触ると、ビクッと身体を震わせた。1週間前までは何とも思っていなかった存在は、涙に濡れた瞳で俺を見上げる。鼻水が垂れていても可愛く見えた。そんな自分に笑ってしまいそうで必死に堪える。ここで笑ったら全てが台無しだ。
「ごめん。言い過ぎた。付き合おうって俺から誘ったのに何もしなかったよな。それが怒っている原因か?」
神田は俺から視線を逸らして、こくんと頷いた。
「冗談だと思ったから……辛かった。恋人とかよく分かんなくて、先生は何も言わないし………本気にした俺がバカみたいだって。」
本当は気付いていた。放課後、神田が何か言いたげにこっちに視線を送るのも知っていた。俺から言い出した手前、アクションを起こすのは年上の自分からだとは思っていた。
正直に言うと、何をしたらいいのか分らなかったのが本音だ。
恋愛に無知な生徒をどこまで俺の気まぐれに巻き込んでいいのか、一歩踏み出せないでいた。これが女だったら話は別で、大体は擦り寄ってくるのでこちらから強引に体の関係へ持っていくだけだった。女生徒も同じく、大切にするフリをしたら、あっという間に股を開く。
だが、神田にはそれをしようと思わなかった。やってはいけない気がして、どうしようか考えあぐねていた。元の目的が性的で無い付き合いは初めてで、爛れまくっている俺の恋愛辞書には攻略方法が全く載っていない。
それに、神田に対し別の感情が生まれつつあるのも自覚していた。
「先生……俺は浮気なんかしてないよ。牧村さんは好きだったけど……全然相手にされないから。」
「えっ……」
神田に好きな人がいるとは聞いていたが、身近すぎる人選に驚いた。また男だし。
昼間に笑い声が耳に入ったので、覗いてみたら神田が事務の牧村さんと仲良く楽しそうに話していた。それを見て非常に不愉快な気分になったのは否定しない。
「じゃあもう、俺と付き合うふりを止めるか。牧村さん、頑張ってみろよ。悪い意味じゃなくて応援するから。放課後も今まで通り来ていいし、恋人ごっこは終わりにしよう。」
さっき神田には言った『お互い傷が浅いうちに終わりにする』は自分自身のためだったと思い直す。そうだな。それがいい。
教師らしく背中を後押ししよう。
すると、神田が意を決したように深呼吸をした。間も無く、弱々しい控えめな声が聞こえてきた。
「………やめたくないって言ったら先生は困りますか?俺………片桐先生のこと……す、好きになったみたい。ダメ……ですか?好きになったら迷惑ですか?」
単純だけど繊細なこの生き物は、一体何を言いだすのかと耳を疑った。
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