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夜のドライブ2
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(葵語り)
車が発進してからずっと俺の携帯が鳴っている。着信主はおそらく先生だ。
用件は島田とドライブに行くことに関しての抗議だろう。仕事や大切な用があるのは痛いくらいに分かってるけど、今は許したくない。大切な記念日をドタキャンされた人の身になって考えてもらいたい。
最初は平気なフリをしたが、相当ショックを受けたみたいで、ダメージがじんわり俺を蝕んでいる。気を許したら泣きそうになり、涙をグッと堪えた。どうせ俺なんか……と、子供っぽく拗ねたくなる。
「葵君。携帯出ないの?かなりしつこいね。」
信号待ちをしている時に、島田が聞いてきた。島田の運転は思っていたより安全だった。
「今は気分じゃないから、後から掛け直すよ。あの人は大事な用事で忙しいだろうし。」
「やっぱり怒ってんじゃん。熊谷先生、葵君より大切な用ってなんだろうね。仕事なら仕事って言うだろうし。まあ、喧嘩したら僕の家においで。布団あるし……あっ………」
島田が何かを思い出したかのようで、口を押さえて独り言をブツブツ言っている。
「どうしたの?何かをマズい事でもあった?とりあえず信号青になったから、進めって。」
慌ててアクセルを踏んだので、少し前のめりになりながらも、島田は考え込んでいた。
「今思い出したんだけど、今夜から彗さんのお兄さんが泊りに来るんだ。だから家に居てほしいって言われてたけど、まあいいや。僕、お兄さんが苦手なんだよね。電話でしか話したことないけど、根暗っていうか……暗さが伝染しそうで嫌だ。大人だしなんとかなるでしょ。僕は葵君の方が大切だから。」
島田はバイト先の店長で自身の兄の友達でもある村瀬 彗さんと同棲している。
俺にやたらとちょっかいを出してくるが、ちゃんと恋人がいるのだ。しかもイケメンで、優しくて島田のことを心から愛していると思う。
島田は不満らしいが、お似合いの2人だ。
その彗さんのお兄さん……さぞかしイケメンなんだろうな。島田が言うには、会社命令で資格取得の為に専門学校へ通うらしく、はるばる遠くからやってくるようだ。そんな人を放ったらかしてドライブをしていいのか気になるが、全く戻るつもりも無いようだった。
それから約1時間程車は走り、海沿いの道路へ入った。途中コンビニに寄り、軽食を買う。目指す海はもうすぐだった。
「着いたよ。うわっ寒い。毛布持って行こうか。葵君、これ持ってくれる?」
「ん、分かった。本当に寒いね。夕日が沈んだから暗いし……でも綺麗だ。」
誰もいない路肩に車を止める。少し前に落ちた夕日のせいで、辺りは暗い中でも薄っすらオレンジだった。これがまた綺麗なのだ。
島田に毛布を渡されたので抱える。軽装で来たから風邪をひくかもしれないと心配になった。
2人で砂浜手前の階段に腰を下ろし、毛布が1つしかないので、くっ付いて包まる。
肉まんを半分こして温かいウーロン茶を分け合って飲み、密着しながら海を眺めた。波の音が荒れた心を鎮めてくれるようだった。
本当に落ち着く音と匂いだ。先生の腕の中の次に海が好きな場所だと思う。
だから、隣に島田が座っているのは変な感じだった。頰が触れるくらい近くにいる。
これが先生だったらいいのに。
先生………会いたいな。用事って何してるのかな。
「こら、葵君。僕といる時に他の男のことは考えないでよ。僕のことも構って。」
島田が拗ねたように怒って腰に纏わり付いてきた。
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