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素晴らしき日常8
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(葵語り)
島田が行きたがっていたイベントは、俺には未知の世界だった。
綺麗な人を紐で縛るとか、痛くて見ていられないかもしれない。だけど、昔のセフレに会いに行って、同じようなことを繰り返してしまう島田を見るのはもっと嫌だった。危ない目に合うかもしれないし、発作だって出るかもしれない。きっと島田は1人でも黙って行くだろうから、俺は付き添うことを決めたのだ。
俺は、轟さんのブログを読んで、緊縛について勉強をすることにした。
轟さんは真面目人だけど、ユーモアを交えつつ、雅さんへの愛を常に念頭に置いて、緊縛へ敬意を払っていた。写真集も同じものを何冊も買って保管しているらしい。一冊には雅さんのサインが入っていた。凄い熱意を感じた。失礼にあたるから、いつもスーツで行くのだそうだ。最初からはハードルが高いので、俺はスーツで行くのはやめておこうと思った。
「何読んでんの?葵が夢中で活字を追いかけているのは珍しいね。見せてよ。」
いつの間にか先生は帰宅しており、突然携帯を覗き込まれて、めちゃくちゃ焦った。
隠しそびれた携帯の画面には縛られて開脚した雅さんが写っていて、暫く時が止まる。
驚いた先生がディスプレイと俺の顔を交互に見て、にやにやした。悪いことは一切していないのに、このバツの悪さは何なんだろうか。
「ほーう……葵はこういうのが好きなんだ。縛られたかった?それとも縛りたい?何か俺に不満なことがあったとか……いつも満足させてるつもりだったけど、実は足りなかったのか。困ったな。」
「そ、そんなんじゃないよ。色々あって……あの、先生は今のままで充分だから。だからね……違うっていうか。」
「じゃあ説明して。ここに座って順番に話してごらん。今言えば怒らないから。後でバレたらどうなるか、分かってるとは思うけど。葵、おいで。」
ソファに腰掛けた先生に隣へ座るように促される。俺が素直に座ると、膝に手を添えられ太腿を優しく撫でられた。
そうだよね。どうせ反対されても行くし、上手く説明するしかない。意を決して先生の手に自分の手を重ねた。ゴツゴツした男の人の手は、少し乾燥していて、だけどとても温かい。
「…………うん。先生と喧嘩したくないんだ。静かに聞いてくれる?」
「ああ、分かった。終わるまでは何も言わないよ。黙ってる。」
じゃあ……と島田と雅さんのことを説明した。島田が心配なことは特に重要なので、それは力説したつもりだ。
話が終わり、先生が考え込んだ顔をした。
「…………島田が心配か……確かに、あいつは今でも不安定な部分があるからな。思いついたら弾丸だし、止めても憧れの人に会いに行くだろう。イベントに付き添えるのは葵しかいないと思うよ。ちなみに何時から始まるの?」
「うんとね……20時からだって。隣接されてるライブハウスには行ったことがあるけど、そんなに広い場所ではなかったと思う。」
そして、先生が俺のスマホをまじまじと見つめた。
「俺も見たくなってきた。この雅っていう男の子、すごく綺麗だな。興味が湧いてきたよ。だって香水のモデルもやってるんだろ。表と裏の顔の違いが気になるし、自分の魅せ方を分かってるもんな。見惚れてしまう人の気持ちが分かるよ。」
「だったら、先生も行く?」
ちょっと……いや、大分面白くなくて先生を見つめると、こちらに視線が返ってきた。
俺の目の前で、他所の男の人に興味を示した先生を見るのは初めてだったからだ。雅さんが魅力的な人だと分かっていても、恋人を取られたような、胸がざわざわした気持ちに包まれた。
「行かないよ。その日は職員会議の後、夜の見回りがあるんだ。残念だな。だけど、こんな葵の顔が見れたから満足。気を付けて行っておいで。帰りは迎えに行くから、また感想を聞かせてよ。色々刺激的だとは思うけど、いい社会勉強になるだろう。」
ほっぺをぷにーと引っ張られ、ちゅっと唇が降りてくる。なんども繰り返し唇を重ねた。
「俺が褒めたぐらいでヤキモチ妬くとか可愛すぎだろ。あーもー、母さんじゃないけど食べちゃいたい。好きだよ。俺の全ては葵しか見てないから安心して。よしよし……」
「………うん。わかった……ならいい。」
そんな言葉で機嫌が直るとか、恥ずかしいけど惚れた弱みだからしょうがない。
俺は先生に抱きついて、明後日を楽しみに思った。
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