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「そうだったんだ!」
「そうなんです……」
俺の前の席に腰掛けて、時折驚いた反応をしながら聞いてくれた菜由。とりあえず緋結たちと景色を見て雑木林で迷った後、アイツが探しにきた事、殴った事を謝る為に追いかけてあんな経緯になってしまった事を話した。
(さすがに緋結たちのを覗き見した事は言えなかったけど)
「意外……。流木先輩、優しいんだね。迷った未月くんの事探してくれたなんて」
え、そこ!?
「いやいや、そんな事ないだろ!」
迎えにきてくれたのは感謝してるけどさっ。その後が大問題なんだよ! 俺の話聞いてた? と問いそうになる俺に菜由が先に口を開いた。
「流木先輩って他人に興味なさそうなイメージだから。初対面の子が道に迷っても一人で帰りそうな感じがする」
「……あぁ。確かに」
そこは激しく同意。寧ろ死にそうな相手もスルーしていきそうなタイプ。
「未月くんの事、わざわざ探してくれたのってもしかして好意が「ない! 絶っっ対ない!!」」
あり得ない菜由の発想を言い終わる前に遮る。
「そうかなぁ」
「だったら下僕なんて言わないだろ!」
他に何か言うことないのかって聞いたのは俺だけど、そんな返しがくるとは思わなかった。
「それに、優しさじゃなくて人が苦しんでるの見て喜ぶタイプだと思う」
じゃなきゃ、泣き顔が可愛いとか言う?
今までの事を思い返すとまた腹が立ってくる。
「あ、そっか。Sだもんね、流木先輩って」
(えす……?)
疑問に思ったけど、この時は流してしまった。それよりも言いたい事があったから。
「とにかくアイツは王子なんかじゃない! 騙されちゃダメだからなっ」
「み、未月くん……」
断言する俺に菜由は若干引き気味。一体何に騙されてるのか分からないけど、アイツがモテる時点でもう間違っている。
「そう言えば、緋結ちゃんって知ってるの? その事」
「あー、知らない」
昨日、伊咲先輩のとこ泊まってたから話すタイミングもなかった。そもそも一番流木と近い相手に話すのも抵抗が……。
でも菜由は笑顔で続ける。
「なら流木先輩の事聞いてみたら? 緋結ちゃんと幼馴染だから良く知ってるよ!」
「えっ」
(別に俺、アイツの事知りたいわけじゃ……!)
そう言う前に予鈴のチャイムが鳴った。
「あ、俺席戻るね」
立ち上がって席に戻ろうとする菜由の細い腕を掴む。
「ちょ、待って! 今話した事絶っ対誰にも言わないで!!」
「う、うん。分かった。内緒にしとくね」
「ありが「将にも伝えとくよ」」
(…………はい?)
「まさか将もっ……」
見てたのかよ!? と言う俺の声は本鈴によって掻き消された。しかも菜由はもういない。
それから緋結も慌ただしく教室に戻ってきた。
やっと今日のHRが終わって、帰り支度をする。
(はぁ、長かった。ねみぃ……)
授業中、うとうとする度先生に指摘されるしクラスの奴らには笑われる始末。帰ったら少し寝よ……。
「──季くん、悠季くん!」
「!! あ、何?」
顔を上げると目の前に緋結がいた。やべ、ボーっとしてて気付かなかった。
「大丈夫? 何か考え事?」
心配そうに眉を下げて聞いてくる緋結にあなたの幼馴染のせいです。とはさすがに言えなかった。
「いや、なんでもない!」
聞けるわけないよなぁ。菜由は聞いてみてって言ってたけど。昨日の事だって話しづらいしさ。幼馴染の事悪く言われたら嫌だろうし。絶対悪口しか言えねぇもん、俺。
「良かった。今日も眞尋先輩の所泊まりに行くから夜いないんだ。ごめんね?」
「うん、分かった。楽しんでこいよ」
そう言えば、緋結は満面の笑みを浮かべた。寂しいけど、やっぱり好きな人と一緒にいたいんだろうな。俺に伊咲先輩との事話してくれたから、言いやすくなったのもあるのかもしれない。
「明日の夜には帰るから何かあったら連絡してね!」
じゃあねっ、と言って緋結は教室を出て行く。
「はぁ……」
緋結、嬉しそう。明日日曜日だからだよな、きっと。学校休みだからずっと一緒にいれるし。
(……俺は漫画読んでゲームして過ごそ)
せっかくの休み。絶対アイツの事だけは考えないようにしないと!
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