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「じゃあ、俺そろそろ……」
特に話す事もなく、飲み終えた缶をテーブルに置いて立ち上がる。フラついたけど立ててほっとした。
風呂に入りに行きたいけどまだ菜由たちいそうだし、もう二時前。明日朝一で入るかと思って、俺はとりあえずコイツの部屋から出ようと思った。
「風呂入ってけば?」
「えっ?」
ドアに向かおうと背を向けたらそんな事を言われて、俺は面食らう。驚く俺に流木は溜め息を溢した。
「お前って二回言わないと分かんねぇの?」
「そ、そんなんじゃないけどっ。いいのかよ? 風呂借りても」
まさか借してくれるなんて思わなかっただけで、再度確認する。
「そう言ってんだろーが」
「ふぅ……」
髪と体、全部洗い終わって俺は浴槽に浸かる。流木も入ったのかちょうどいい温度。
「なんか、調子狂うなー……」
口調は相変わらずムカつくけど、風呂借してくれるなんて大雪にでもなるんじゃないかと不安になる。行かない方がいいって、場所も教えてくれたし。
(アイツ、本当はいい奴なのかも)
「……はぁ」
浴室の白い天井を見上げながら、俺はこの前探してくれた礼を言おうかと思った。
上がって部屋に戻ると流木は数学の教科書を広げていた。俺が一番嫌いな教科。数学だけじゃなく理数科目全般苦手。化学とか絶対卒業したら使わないだろって思う。水兵りーべ、なんてもはや呪文。
「……それ、宿題?」
集中してる流木の隣に座って覗き込むと、難しい数式がノートにずらっと並んでいた。
(意外と字きれいなんだ、コイツ)
「そう。お前には分かんねぇよ」
「当たり前だろ! 俺まだ一年だしっ」
「これ、一年の時の問題だけどな」
「……え」
こんなの習ったっけ? 記憶が全くないんだけど!
内心焦っていたのが顔に出たのか、俺を見てくくっと笑う流木。
「バーカ。ちゃんと授業受けろよ」
コイツ、こんな普通に笑えるんだ。いつもバカにしたような笑みばっかだったからびっくり。
「……何」
ついじっと見ていたせいで流木が怪訝な表情を浮かべた。
「な、んでもっ! お前こそ一年の問題分かんないのかよ!」
「お前と一緒にすんな。俺は復習してんの」
(っ、何も言い返せない……!)
流木は止めていた手を動かして問題を解き始める。カリカリとシャーペンを動かす音だけが部屋に響く中、今なら言えそうな気がして口を開いた。
「流木、この前さ、探してくれてありがと……」
なんか照れくさくて、俯きながら呟いた。しかも途切れ途切れ。
(礼言うのってこんなに言いづらかったっけ!?)
問題を解いていた流木の手が止まって、俺を見下ろしてるのが分かる。
「言おうと思ってたんだけど、忘れててっ! じゃあ、俺帰る!」
居ても立ってもいられなくて、俺は立ち上がろうとした。
──が。
「誰が帰っていいなんて言った?」
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