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俺の部屋へ行った後、着替えて寮の外に出た。
(あぁ、晴々しい空が憎い……)
「後ろ乗れ」
「え、お前バイク乗れんの?」
てっきりバスで行くのかと思ったら駐輪場に連れて来られて、バイクに跨がる流木からヘルメットを投げ渡された。無言で。
(……被れって事だよな)
悩んだけどここまで来たらもう逃げる術もなく、それを被って後ろに跨がる。
初めて乗るからちょっと緊張。
「落ちんなよ」
「ひっ」
エンジン音が鳴り響いて、俺は落ちないようにぎゅっと流木の腰に腕を回した。
(うわ、やっぱいい香りする。そう言えば、部屋出る時香水付けてたっけ)
嫌いだしムカつくけどこの香りは好きかも、と思いながらその背中を嗅いでしまった(変態……)。
「こ、怖かった……」
予想以上にスリリングでカーブの所なんか放り出されるかと思うほど。必死にしがみつくだけで精一杯で景色を見る余裕も言葉を言う事もできなかった。
(もうジェットコースター並み……)
「行くぞ」
「え、ちょっ……」
まだ休んでるのに! 鬼かよっ。
バイクを駅前の駐車場に止めて、スタスタと歩いて行く流木を慌てて追いかける。
日曜だからか人が多くてぶつかりそうになる俺とは反対に、軽やかに進んでいく。
「迷子になるなよ」
「なるか!」
どこに行くか分からないまま、俺は歩幅が大きい流木に小走りで付いて行った。
「んじゃ、次」
まだ行くのかよ!?
ありがとうございましたーって言う店員の声、何度聞いただろ。街についた途端、服とかアクセサリーショップ巡りをする流木に俺はただ付いて行くだけ。
店に入る度に迷う事なく手にした物を買っていくし。店員さんも俺なんか蚊帳の外で流木に商品を勧めてる。
しかも行く所オシャレな店ばっか。絶対高校生は入らないだろ! って感じの。パーカーにジーパンで来た自分が恥ずかしくなってしまう。しかもショルダーバック。
(こんな事なら制服で来た方がよかった気がする……)
今も店員さんに商品を勧められながら、自分の体に高そうな服を当てて鏡を見ている流木を俺は店内の椅子に座って見ている。それは俺だけじゃなく。
(……さっきからずっと女の人の視線集めてるし)
店内の女性店員やお客。外歩いてる時も。あの顔と容姿に騙されてるよ、みんな。中身は最悪だからな!
(昨日だって人の手首縛って──)
そこを見ると赤い痕がくっきりと付いていた。暫く消えないだろ、これ……。嫌だって何度言ってもやめてくれなかったし、寧ろ。
『泣き顔が一番可愛い」
なんて言いやがった!
「ほんとムカつくっ……」
なのに、思い出すと体が熱くなってしまう事実にぐっと唇を噛み締めた。
「未月」
「!」
聞こえないように呟いた時、名前を呼ばれて顔を上げると顎でくいっとされた。
(来いって事かよ! てか口で言え、バーカ!)
心の中で悪態を吐きながらも仕方なく流木の元に駆け寄る。
「な、なに?」
「試着するから一緒に来て」
(……は? 一緒に来て?)
「こちらへどうぞ」
「えっ、一緒って!?」
背を向けて歩き出す店員さんと流木。俺は意味が分からなくて立ち尽くしたまま。そんな俺に気付いたのか、流木が何歩か歩いた所で振り返ってきた。
「何してんの。早くしろ」
「っ、」
こ、こわ! 別に睨まなくても良くね!?
とりあえず持たされていたお買上げ済みの荷物を椅子に取りに行ってから、慌てて後を追いかけた。
(てか、今日荷物持ちで連れて来られたのか? 俺……)
「こちらお使い下さいませ。流木様」
流木様……。他の店でもそう呼ばれてたけど常連なの? コイツ。その中には俺でも知ってるようなブランド店もあった。お会計の時、毎回万越えだし。そしてブラックカードでお支払い。
(マジで高校生かよ。絶対危ない何かしてそう)
靴を脱いで試着室に入る流木が振り返ってきて、何故か眉を寄せる。
「お前も入るんだけど」
は!?
「いいよっ。俺、ここで待って「あ、お連れ様申し訳ありません! お荷物、お預かりしておきますね」
いや、そっちじゃない! 普通、試着室は一人だろ!?
だけど、眼鏡をかけた紳士的な店員さんは俺が持っていた荷物をとると笑顔で〈どうぞ〉と言ってきた。
「未月」
「〜〜っ、分かったよ!」
また名前だけ呼ばれてコイツと背後で頭を下げている店員さんの圧に、もう入るしかなかった。
俺が入るとガチャっとドアを閉められて。逃げ場なし。意外と中は広かった。
でも……。
「なんで俺まで……」
「チビだからいてもいなくても変わんないでしょ。まぁ、横はデカいけどね」
「どー言う意味だよ!」
ふっと笑って言う流木に即突っ込んでしまった。
(てか、いてもいなくても変わらねーならいなくていいじゃん!)
「そのままの意味。ほら、これ持ってろよ」
そう言って手渡されたのはさっき流木が見ていた服二着。ノースリーブとセットの羽織るシャツ。黒に近いダーク系と白色。下に着るノースリーブとシャツは色違いだけど。
(そもそもどっちでもよくね?)
なんて思っていたら目の前でいきなり服を脱ぎ始める流木。
「な、何してっ!?」
「脱がねぇと試着できないだろーが」
あぁ、確かに……って、そうじゃなくて!
呆れたように言う流木に俺は心の中で一人コント。急に現れた目の前の裸に心臓の音が壊れそうなくらい、速くなる。俯く俺の腕から、シャツが黒でノースリーブがグレーっぽい、ダーク系の方を先に手にした。代わりに今脱いだ流木の服を腕に放り込まれる。
(うわ、香りがっ……)
ふんわりと香る香水に息すらまともにできなくなる。
頭の中には一瞬見てしまったコイツの裸が何度も繰り返されてしまう。
(は、腹割れてんのかよっ。コイツ、体も完璧なわけ!?)
背高いし、痩せてる方だとは思っていた。
でも腹はキレイに割れていて胸板も厚い上に、筋肉が均等についている、ように見えた。とりあえず俺とは別次元並みに正反対って事だけは分かった。
「未月」
呼ばれてつい顔を上げるとその服を着こなしてる流木がいて。普通に、カッコいいと思ってしまった。
「どう?」
「っ、別に!」
返答になってない返答をして俺は背を向けた。だって、直視できるほど、今の俺には余裕がなくて。なのに背後が鏡であんまり意味がないと言う悲劇。
「……悠季、」
「っ……」
後ろから伸びてきた手に顎を掴まれて、正面を向かせられる。鏡越しに流木と目が合ってしまった。
「顔真っ赤」
楽しそうに笑うコイツに反論する事もできず、肩越しに唇が重なってきて。
「ぁっ、りゅぅ……んっ」
腹に回される流木のがっしりした腕に、背後から覆い被さるように抱き締められて、持っていた服が下に落ちていく。
(もっと──、)
そんな事を思ってしまった直後、外から店員さんの声が聞こえてきて。
「流木様、如何でしたでしょうか?」
「!?」
我に返った俺は速攻でコイツから離れた。
(今、何思った!? 俺っ……)
自分に混乱しながらまだドキドキと煩い心臓をぎゅっと服の上から握る。そんな俺にコイツは追い討ちをかけるように口を開いた。……俺の耳元で。
「帰ったら、たくさんしてやるよ」
何をだよっ。
鏡越しに笑う流木を俺はただ睨みつけるしかできなかった。
(うぅ、そんな事よりちょっとパンツ濡れちゃったじゃんか……!)
ジーパンまで染みてなかったのが唯一の救いだった……。
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