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「じゃあ、次の問題。酸素の同素体は何だ? 未月」
「えっ、に、二酸化炭素……?」
「お前なぁ……。これ昨日した基礎問題だぞ」
うっ……。先生の呆れた声に俺は何も言えず。
「答えは酸素とオゾン。明日のテスト、半分とれなかったら補習延ばすからな」
「……はい」
(マジかよーっ。これじゃ、山本の言葉通りになっちゃうじゃんか!)
そう心の中で叫ぶ俺を置いて、先生は次の問題に進む。
──一昨日、終業式を迎えて北桜は待ちに待った夏休みを迎えた。多くの生徒が街に下りて家に帰ったり、部活がある生徒は残ったり合宿行ったり……。それぞれの夏休みを過ごし始めている。
俺含め、ある一部の生徒を除いては。
「よし、今日はここまで。明日のテスト、基礎問題と応用問題幾つか出すから、ちゃんと復習してくるように」
五十五分の長い授業を終えて、やっと二日目の補習が終わった。
「はぁ……」
(明日のテスト、五十点とれなかったらまた延びるのか……)
帰り支度をしながら、憂鬱な気分のまま寮に帰る。本当だったら終業式の日、母さんが迎えに来てくれるはずだったのに。
「まだ数学の方がいいかも……」
理数科目、全体的に嫌いだけど化学なんてどう勉強したらいいんだよ。
悶々と考えながら寮に着いて、階段を登る。夏休みですれ違う生徒もいない中、二階の二年の階に差し掛かった所で何か声が聞こえてきた。
(なんか、すげぇ嫌な予感……)
「鈴汰、待って!」
「しつこい。もう来んなって、何度言ったら分かるわけ?」
げっ、この声って流木じゃん!
その声に階段を登る足が止まる。と同時にこの前と同じ状況に泣きたくなった。
「分かるわけない! なんで、そんなこと言うの? 他の子たちとも関係切ってるし、意味わからないよっ……」
また相手の人泣きそうな声……。てか、この前と同じ人?
「やっぱり、アイツと「はぁ、黙って。それとも、嫌いって言ったら満足かよ」」
うわぁ、相変わらずサイテーな奴! 言い方がまた心を抉るような……。
なんて思っていると、その場から逃げるのを忘れていて。
「鈴汰のバカ!」
「っ……」
その言葉を言い放って階段を下りてきた人物とすれ違ってしまった。
(あ、この人って……!)
「……絶対、許さないからっ」
涙を拭いながら俺を睨みつけてきた亜宮先輩は、すれ違いざまにそう言ってきた。
「ゆ、許さないって……」
え、俺のことじゃないよな!? 最近アイツと関わりないし!
ぐるぐると考えながら亜宮先輩が下りて行った方を見ていると、背後に人影を感じて。
「……悠季、何してんの」
あぁ、また逃げ遅れちゃったよっ……!
「べ、別に何にも!」
俺も階段を下りようとした。部屋があるのは三階だけど、魔王に立ち向かう元気はもう化学で全部使い果たしてしまったから。
(コイツがいなくなったらまた来よう!)
だけど、そう思ったのも束の間で。後ろに腕を引かれてしまった。
「う、わっ……」
そのまま強制的に階段を登らされて、引き摺られるように連れてこられたのコイツの部屋。連れてこられてる間、俺は離せとか文句言ってたけど、コイツは一言も話さなかった。
逆に怖いし、俺何もしてないからなっ!?
バタンと閉まるドア。その後にガチャリと鍵が掛かる音がした。
(なんで夏休みなのにコイツの部屋来なきゃ行けないんだっ……)
「な、何か用かよっ?」
「別に。下僕なんだから理由要らねぇだろ」
はぁ!? コイツまだそんなことっ……。
不機嫌そうな流木はそれだけ言うと先に部屋へと上がる。逃げ出そうと思えばできたけど、それも後が怖くて必死に退散できる理由を探す。
(……あっ、そうだ!)
「俺、明日化学のテストあって勉強しなきゃだから帰る! さよならっ」
さっきまで憂鬱だったけど逃げ出す理由ができて、俺は背を向ける。
が。
「へぇ。なら、俺が教えてやるよ」
「っ!?」
ドアの鍵を開けようとしたら後ろから伸びてきた手に阻止されて。ドアとコイツに挟まれてしまう。
その声はさっきとは違って楽しそうだった。
「いや、い「補習延びてもいいのかよ」」
くっ、コイツ……!
人の弱みをついてくる流木に唇を噛み締める。
でも、コイツの教え方が意外とわかりやすいのは数学で既に知っているせいか、断れずに悩んでしまう。
(教えてもらうのは嫌だけど、夏休みが遠のくのはもっと嫌だ!)
悩んだ末、後者を選んだ俺は自らコイツの部屋に足を踏み入れてしまった……。
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