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──そして翌日。
「うわ、すごい人……!」
夕方十七時過ぎ。父さんから緋結の地元、白金台で行なわれる花火大会の会場に送ってもらった。
初めて来たけどすごいな……。来る道中、父さんから聞いたけど高級住宅地なんだっけ。なんか、見る人上品だしきれい。
(俺、場違いなのでは……)
なんて不安に駆られながら待ち合わせ場所へと向かう。
確か露店の入り口ら辺って、
「……いてっ」
駆け足で歩いてると足に痛みが走った。履きなれない下駄に、鼻緒が足の親指と人差し指に擦れていて。今日もつのだろうかと不安になってしまう。
「あっ、悠季くーん!」
「! 緋結っ」
痛みに立ち止まっていると前の方から名前を呼ばれて、顔を上げたら緋結と伊咲先輩の姿が見えた。
「久しぶりだね! 補習お疲れさまー♪」
駆け寄ってきた緋結にぎゅっと抱きつかれる。
「あ、ありがと。てか、緋結可愛いね」
抱きついてきた緋結の格好は淡いオレンジ色をベースに小さい花柄が描かれた浴衣だった。帯も濃いめのオレンジ色で後ろで蝶々結びにされている。それに、化粧もしてる、のかな。
(マジで女子かと思った)
「悠季くんも可愛いよ! ね、眞尋先輩っ」
「いや、俺はっ……」
「うん。可愛いね」
「っ……」
否定しようとしたら緋結の隣に並ぶ伊咲先輩に笑顔で返された。
(あぁ、恥ずかしい……!)
お世辞とはわかってるけど、俺には嬉しくない言葉なんだよーっ。なんて、心の叫びは二人に届くはずもなく。
そんな伊咲先輩の浴衣はシンプルな無地のグレーにストライプ柄が入っていて。黒の帯が巻かれていた。
(うわ、めちゃくちゃカッコいい!)
髪の毛もセットされていて、学校で会う時と全然雰囲気が違う。
「どうしたの? 悠季くん」
「え、あ、いやっ……」
普通に見惚れていたらずいっと伊咲先輩の顔が近付いてきて、しどろもどろになってしまう。
「悠季くん、顔真っ赤! ダメだよ、眞尋先輩は僕のなんだからっ」
ぇえ!?
「ち、ちが! そんなんじゃっ……」
誤解だよ、緋結!
伊咲先輩の腕に抱きついて、俺を見てくる緋結に慌てて否定する。
「悠季くんはそんなつもりないよ」
「でも、眞尋先輩カッコいいから、わかんないもん……」
拗ねるように口にする緋結に確かにそう思ってしまったけど、さすがにこの状況で言えなかった。
「それに、仮にそう思ってたら許さないと思うよ」
(許さない……?)
誰がと思った時、背後から人の気配を感じた。
「何してんの、お前ら」
「っ!?」
こ、この不機嫌そうな声って……!
「れいちゃん!」
やっっぱり!!
絶望する名前を緋結が普段呼んでるあだ名で口にする。
「ほんとに来たんだ」
「ふふ、だから言っただろ? 絶対来るって」
そんな会話をする二人に俺は後ろを振り向けず固まってしまう。
(できれば今すぐにここから逃げ出したい!)
嫌な予感大的中だよっ。
「お、俺帰っ「未月、」!!」
来た道を戻ろうと振り返った。
だけど、同時に腕を掴まれてコイツと向き合ってしまう。
「え……」
そこに居たのは無地の黒色の浴衣を着た流木で。帯は生地より濃い黒い色。
(なんか、この浴衣って……)
「……へぇ。馬子にも衣装だな」
な!?
ふっと笑って言われた言葉にカチンとした。
「るさいな! お前だって……っ」
そこまで言って言葉が止まってしまう。
だって、言い返そうにもコイツの頭から足先まで見ても非の打ち所がなかったから。伊咲先輩と同様に髪もセットされてるし。
今だって、ただ立ってるだけですれ違う女の人のカッコいいって声が聞こえてくる。何より視線がヤバい。それはコイツだけじゃなく、伊咲先輩も含めてなんだろうけど。
「何、」
「……な、なんでもねぇよっ」
結局、一言も言い返せないまま顔を背けてしまった。
(情けな……)
「もう、れいちゃんそんな事言ったらダメだよ。悠季くん、可愛いのに」
いや、それもそれでどうなんだ……!
複雑な気持ちになっていると、伊咲先輩が口を開いて。
「みんな揃ったし、露店回ろっか」
「うん!」
「……はい」
「………………………………」
……こんなんで楽しくなるのか!?
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