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「あ、じゃがバター!」
「……お前、また食いもん……」
あの後、いちご飴、アメリカンドッグ、唐揚げ、いか焼き、かき氷の屋台を巡ってからのじゃがバターののれんが見えて足を向けてしまう。
人混みの中、先を歩く俺の後ろから呆れた様子で流木が付いてくる。そんな声すら今のこのテンションの中では気にならなかった。祭り効果って素晴らしい。
「らっしゃい!」
「じゃがバター一つ下さいっ」
「おう! 五百円ね」
俺が頼むと背後にいた流木が財布から五百円を取り出して払ってくれる。最初は申し訳ないと思っていた光景も、この雰囲気の中我慢もできずに買ってもらってしまう。
(まぁ夏休み終わったら返すし、いいよな)
意外とコイツも何も言わずに買ってくれるから、ついつい親と来た時みたいな感じになってしまって。
「じゃがバター、お待たせ!」
「ありがとうございます!」
元気なお兄さんからホクホクと湯気が立つじゃがバターを受け取る。四つ切りされた穴に、バターが溶けて美味そう。
「あっち空いてる」
「うん」
流木の言葉に着いていこうとしたら、隣の屋台のお姉さんに引き止められた。
「カッコいいね。いくつ?」
「え、あ……」
って、俺じゃなくて流木ね……。
二人組のお姉さんの視線の先には流木しかいなかった。
(そりゃそうだよな。わかってましたとも)
「……十七」
「えっ! うそっ、見えない!」
「大人っぽいねー」
無愛想に答える流木とは逆にテンションが上がるお姉さんたち。
俺より身長高いのはヒール履いてるせいだと思いたい。服装も胸元ががっつり開いてるし、スカートも短くて。香ってくる香水? もいい香りだった。
なんて、俺が思ってる間にも話しかけられてる。
「君は弟くん? 小学生?」
小学せ……!?
いきなりこっちを見たと思ったら、まさかの小学生扱いで。
(しかも弟!)
「いや、俺っ「あ! おめん、どう? 鈴汰くんカッコいいからまけてあげる♡」」
色々訂正しようと思ったら、もう一人のお姉さんに遮られてしまった。
てか、鈴汰くん……。もう名前呼び。
(すごい……)
「お前、何がいいの?」
その迫力に驚いていると、流木に聞かれてズラっと並んでるおめんに目をやる。
「えっと……」
上の端から視線を動かしていくと、あるキャラを見つけた。
「じゃあ、このパンダ」
「パンダね! 鈴汰くんは?」
え、コイツも? と思ったのは俺だけではなく。案の定、流木自身も断ろうとしたらお姉さんに阻まれていた。
「いいから、いいから♪ ほら、これいいんじゃない?」
「はい、屈んでー」
「っ……」
お姉さんに挟まれて、強制的に腕を引かれて屈まされる流木。
(へぇ、コイツでも言い返せない時ってあるんだ)
それか相手が女の人だと押しに弱いタイプ? 照れとかではなさそうだけど。顔がずっと怖いから不機嫌そうだし。
でもお姉さんたちは気付いてないのか怯む様子はなく。
「じゃーん! あはは、似合うよ」
「可愛い、鈴汰くん♡」
「………………………………」
(うわぁ、こわ……)
流木の表情とオーラに俺の方が萎縮してしまう。
そんな流木の頭には右側にピカ〇ュウのおめんが付けられていた。
表情と可愛く笑うピカ〇ュウのおめんが合ってなさすぎて、笑えてくるのを必死に堪えた。
「じゃあ、弟くんはパンダねー!」
「わっ」
じゃがバターを手に持ってるせいで阻止できず、頭にズボッと被せられる。流木とは逆で左側に。
(って、だから俺、弟じゃないのに!)
「七百円でいーよ」
「……どうも」
お姉さんの言葉に低い声でそう言って、財布からお金を取り出す。
「また来年来てね♡」
──ちゅ♡
「!?」
え!?
流木の腕に抱きついて、つま先立ちしたお姉さんがその
頬にキスした瞬間。俺の手からするする~っとじゃがバターが落ちていった。
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