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私(27)
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夏も終わり頃、私は先生の書斎へ呼ばれました。
別段、珍しい事ではございません。
新作のお話かと思い、なんとなしに書斎へ行きますと、私が腰を下ろしきる前に、先生は文机に向かったままこう仰いました。
「どうだい。ユリオは。」
わざわざ、呼び出しておいて、そんな話か。
と、内心思いましたが、先生の事です。
何か裏があるのかも知れません。
「まあ、よくやってます。物覚えもいいですし。」
「そうではなくてだな…」
私が言い終えるか終えないかの内に、先生が言いました。
「君にとってのユリオはどうかと聞いている。」
「と、言いますと。」
言葉の意味がわからず、素直に言うと、先生は珍しく焦れた様な声を出しました。
「君にとってユリオは大切な人かと聞いている。」
私は、首を捻りたい処を必死で抑えます。
「ええ。まあ…私に弟はおりませんが、居ればこの様な感覚なのではないかと思っています。」
「そうか…。」
やや間がありました。
なにやら先生が、いつもと調子が違うようで不安になります。
「では、君はその弟の様な存在を抱けそうか。」
待ちに待った言葉がこれでした。
先生の突拍子もない言動には慣れているつもりでしたが、今のは理解に苦しみます。
「は。」と思わず、間の抜けた声を出してしまったのですが、先生はそれ以上、その言葉を説明してくださる気はないようです。
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