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動き出した気持ち
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あんなことがあった日から、一週間が経とうとしていた。
相変わらずの歯医者通いも正直、面倒くさい。途中で歯医者に通わなくなるという気持ちがよく分かる。
「なぁ斎。いつまでココ通わなきゃ行けねーの」
唐突に聞いてみると、
「私がいいと言うまでですが?」
そう言ってニコ、といつもの腹黒い笑みを向ける斎。
…コイツにこういうこと聞くのは間違っていた。
斎に出会って歯医者というトラウマを見事脱ぎ払ってくれたことには感謝している。
だけど最近何だかおかしい。
斎を思うと、何だか胸の奥が痛くなるような熱くなるような…
日常になりつつあるキスも何の抵抗も無くなってやけに鼓動が早くなったり、斎に対する嫌悪感が無くなったり。
俺おかしいのか…?
目の前で書類に目を通している斎を見る。
…今更だが、俺達って何なんだ…?
医者と患者でキスしたりデートなんてするもんなのか…?
つか、付き合ってもないのにキスとか……
…いやいやいや!!男同士で付き合うとかあり得ないだろ。まさかあのホモ野郎に感化されてきちまったとか…?
「どうなってるんだ…俺の頭はおかしいのか…」
「ようやく気づいたのですか?」
そう言ってフッ、とほくそ笑む斎。
「そういうこと俺は言ってんじゃねぇ!」
「じゃあ、どういうことですか?」
「…う。」
そう言われ、言葉に詰まる凪。
俺がホモになりました。なんて、口が裂けても言えない。
いや、つかなってねぇ。なってねぇから。
ただアイツのペースにまんまと乗せられてるってだけであって俺はホモじゃなくてノーマルなのだ。全く問題ない。
「俺はノーマルだ。」
見つめる斎に言い放つ。
暫くの沈黙が二人を包む。
「…えぇ、平凡ですよね。それが?」
「誰が平凡だ!」
「いや、平凡以外の何者でもないでしょう」
わーわーと医院内で騒ぐ医者と患者に、最初こそ止めに入っていた助手さん達も今ではその光景になれたのだろう、見事にスルーをこなしている。
「それより、明日4時。ちゃんと来いよ」
「話終わってねぇのに!…チッ…分かってるよ」
「遅刻したらお仕置きな」
「は?!んなのされてたまるか!」
ちゃんと行きゃあいいんだろ、と斎に告げると、玄関に向かう凪。
いつものように見送る斎は凪の腕を引くと、壁に押し付ける。
先程までブツブツと文句を垂れていた凪だったが流石に口を閉ざす。
見つめ合う二人の間に沈黙が流れる。
斎の瞳が閉じられると、自然と己の瞼も閉ざされていく。まるでお互いがそれを望むかのように。
静かに重なった二人の唇。
ドキドキと心臓が飛び出るかのような感覚に凪はやはり違和感を感じた。心の何処かで目の前の男を求めているような気がするのだが、理解したくない。それを知りたくない。それに気づいてはいけないと頭が警告するのだ。
軽く触れ合うだけのキスだった。
それだけのキスなのに身体が熱く火照る。
静かに斎は唇を離すと、未だにぼう、としている凪の頭を撫でた。
「気をつけて帰れよ」
斎はそう言うと中へと入っていった。
残された凪は唇の消えた熱を思い出すかのように指を己の唇に押し当てる。
すると、扉が開くと共に、寒い空気が入ってきたことでハッとする。
お客さんが入ってきたことにより意識が戻されると扉を開け、走って家に帰った。
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