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新たな男
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今にも泣きそうなくらい思い詰めた彼女の姿に失恋して落ち込んだ自分の姿と重なった。
「大丈夫だよッ!」
気付いたら拳をギュッと握り、大声で叫んでいた。
「二宮くん、本当に大野さんのこと大事にしてるよ」
『ありがとう』
耳元で鼓膜を震わす優しくて温かな声。
『好きになってくれて、ありがとう』
今でもこんなにも鮮明に思い出せる。
「…だから、大野さんももっと自分に自信を持っていいと思うよ!」
彼を思い出して胸が暖かくなる。泣きそうになるのをグッとこらえて歩は微笑んだ。
「ありがとう、相葉君…」
茜も最初こそ少し驚いた様子だったがうっすら涙を浮かべながら口元に笑みを浮かべていた。
やはり笑うと可愛いらしい。
きっとこの笑顔に二宮も好きになったのだろうと歩は思った。
「…でもね、本当にあっくんに別に好きな人ができたなら笑顔で別れなきゃって思ってるんだ。
もう十分あっくんを独占しちゃったから…」
目尻に溜まった涙を拭いながら茜は続ける。
「私が相葉君みたいに綺麗だったら自分にも自信を持てたのにね」
寂しそうに笑う少女は泣いているようにも見えた。
◇◆◇◆
「ねぇってばぁ!あゆ、茜ちゃんと何話してたの?」
「だから、内緒だよ」
帰り道はともちんからの質問攻めだった。
どうして女の子はこうすぐに色々なことに首を突っ込みたがるのだろうと苦笑いが漏れる。
ともちん達が保健室に戻ってきたのは歩が茜に涙を拭うようにとハンドタオルを渡した時だった。
それからずっとこのやりとりが続く。
「教えてよぉ!」
「ダ~メ」
「あゆのケチ!」
「ケチだもん」
二人の小学生のような言い合いは急に割り込んできた声に中断された。
「…あれ?歩くん?」
「はい?」
反射的に返事をして声の主を確認すると驚きで一瞬声が出なかった。
「…亮一さん?」
隣ではイイ男には目がないともちんが目を輝かせていたが、歩はそれどころではなかった。
「久しぶりだね」
目の前でにこりと笑う青年は、数ヵ月前のゴールデンウィークに遥を振った大学生の元彼氏。
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