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交錯する想い
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◇◆◇◆
夏休みも半分過ぎ、今日は学校登校日だった。
休み気分のままで登校する生徒達は一様に浮かれており、肌の焼け具合を比べあったり週末に控えた花火大会に向けて相談したりと盛り上がっていた。
いつもならその輪の中の中心で一際目立つ二宮だったがその表情は浮かなかった。
「二宮~?花火大会どーする?」
「ああ…何時開始だっけ?」
「にのっち元気なさすぎ~!夏バテじゃない?」
周りの級友達にも曖昧に笑い、担任が来たから、と窓際の後ろから二列目の自分の席に戻る。
視線を外に向けながら夏休み前の夜のことを思い出していた。
『ただッ……ヒクッ…側にいたくて…二宮く…の側に…いたいよ』
華奢な肩が震えていた。涙を見た瞬間、気付いたら抱き締めていた。
歩の気持ちを聞いた時、不思議と同性だということにも嫌悪感は感じなかった。むしろ好意を持たれていたことが嬉しかった。
遠慮がちに背中に手をまわされるとずっとこうしていたいとさえ思った。
『好きになってくれて、ありがとう』
これは本音。しかし言葉にした瞬間、いつかのマキのセリフが頭を過った。
“茜のこと泣かさないでよ”
この瞬間、ようやく分かった気がした。
(泣かせねぇよ…)
ぎゅっと腕に力をこめる。この温もりを忘れないように。
返事のようにぎゅっと抱き締め返されれば鼻の奥がツンとした。
『けど、やっぱり俺は茜を裏切れない』
中学生という多感な時期に自分と付き合ったために傷付けてしまった茜をまた泣かせることはできない。
この三年間ずっと健気に尽くしてくれた。
優先させるべきは今の気持ちではない。
『大好きだったよ』
気持ちを断ったのにそれでも優しい笑顔でそう言ってくれる歩を思わずまた抱き締めたくなったが
中途半端なことはしたくなかった。拳を握りしめて耐えた。
笑った顔が大好きだと言われた。そんなの自分も同じだったが
敢えて好きという言葉は使わなかった。
『はは…俺もお前の笑った顔、結構いいなって思ってた』
お互いに微笑んでいたが二宮は心の中で静かに泣いていた。
初めて出会った保健室でもう全てが始まっていたのかもしれない。
あの笑顔にドキドキさせられた。
気付いたら目で追っていた。
隆之と二人で仲良くしている姿に胸がざわついていた。
男だとわかってもそれは変わらなかった。
性別なんて関係がない。
友達だから、なんて口実だ。
とっくに恋に落ちていた。
もう会えない。
後悔したってもう遅い。
自分で終わらせたのだ。
悔やむ資格すらない。
行き場のない気持ちを持っているのは歩も二宮も同じだった。
◇◆◇◆
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