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交錯する想い
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離れようと後ずさるが腕を掴まれてかなわなかった。
「そーゆー冗談とか笑えないです…遥の話をしてください」
ねっとりした視線に耐えきれず顔を背けると亮一はふっと唇の端を歪めて笑った。
「やだなぁ…もう歩くんに会えたから遥の事なんかいいんだよ」
「え…?だって遥がまだ忘れられないって…」
「あれは後悔したよ。遥と別れて歩くんと会えなくなってね
あれ?遥のことだと思った?若干嘘もついたけどまだ忘れられないかって聞かれて返事した覚えないけど」
亮一が何を考えているのか分からない。ただ、終始笑顔でいる目の前の人物が急に恐くなった。
(はる…か…)
薄く開いた唇は知らずに助けを求めていた。
微かな動きを読み取った亮一が喜んだように目を輝かせる。
「遥には別れる時にきちんと話したよ。本当は歩くんが本命だったってね
相当ショックだったみたいだよ。あの子プライド高そうだしね」
あの日のショックと哀しみの入り交じったシンクロはこういうことだったのか…
体が震える。
桃色の頬から一筋涙が伝って落ちる。
それを見て亮一は嬉しそうに舌を這わせてすくいとる。
嫌悪感で鳥肌しかたたない。
先程から頭の中の警報がうるさいくらい鳴り響いている。しかし腕をしっかり掴まれていることもあり逃げられない。
「何が目的ですか?」
震えから顎がカチカチ鳴る。
「そりゃ歩くんを俺のものにすることだよ。身も心もね」
トン、と指先で肩を押されただけなのに力が入らずソファに背を預けた。もう腕を掴まれてないのに体が鉛のように重く動けない。
瞼も開けているのが精一杯になる。
そんな歩の様子を満足そうに上から見下ろす亮一。
「効いてきたか…ごめんね、飲み物にちょっと混ぜた」
どこからかくぐもって携帯の着信音が鳴っているのを頭の片隅で聞いていた。すると亮一は歩のカーゴパンツのポケットを探り出す。鳴っていたのは歩の携帯だった。その画面を確認して口の端を歪ませたように笑う亮一が歩にもその画面を見せた。着信相手の名前は『遥』。
「虫の知らせってヤツ?君たちって正反対なのに仲良いもんね」
「でも残念でした」
鳴り続ける携帯の電源を落とされた。
「好きなんだ。狂いそうなくらい」
呟かれた言葉は朦朧としている歩には届かなかった。
亮一は無言のまま歩を抱える。
今まで貼り付いていた笑顔は無表情に変わっていた。
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