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奪還
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◇◆◇◆
今日は学校登校日。
遥は教師陣の長ったらしい話を体育館で聞きながら欠伸をこらえていた。
(はる…か…)
突然頭の中で聞こえた声。
視界が霞んできて直後、体育館にいたはずなのになぜか目の前には黒いソファに座る男。
驚いて瞬きすると元の体育館に戻っていた。
白昼夢なのだろうか…無性に襲われる不安感に身震いすら起きる。
テレパシーなんて初めてだ。
空耳かと疑いたくなるようなか細い声だったが確かに歩の声だ。
しかもあの部屋には見覚えがあった。
黒のソファもそれに座る薄く笑う男も。
そういえば昨夜歩に彼氏がいるかとか亮一が忘れられないかとか聞かれた。
偶然が重なっただけなのか…
「ちょっと遥大丈夫?顔色悪いけど貧血?」
考え込んでいると隣にいたマキに肩を掴まれて我に返った。
とうに教師達の話は終わっていたらしく生徒がぞろぞろ体育館を出始めていた。
心配するマキに構わず遥は急に思い付いたようにポケットから携帯を取り出して電話を掛ける。
遥の肩を今度は隆之が掴んだ。
「おい、校内での携帯の使用は禁止だぞ」
肩には風紀の腕章がかけてある。
遥は隆之の言葉を無視して祈るように電話口の相手が出るのを待つ。
だが無情にもコール音が途切れ女性の機械的な声に切り替わる。
絶対に何かあったはずだ。
「歩…」
遥の呟きに目の色を変えたのは隆之だった。
「歩がどうかしたか?」
あくまで冷静だが眼鏡の奥が険しい。
嫌いな男だったのに気付いたらすがるように隆之の腕を掴んでいた。
「歩に何かあったかも…」
隆之の眉がピクリと動く。
「歩はいまどこだ?」
弾かれたように遥が走って体育館から出ていく。隆之も後に続く。
ポカンと完全に取り残されたマキが慌てて後を追う。
体育館を出た渡り廊下で二宮が友達と談笑しているのを見つけてマキはとっさに二宮の腕を掴んで引っ張るように走っていた。
「マキ!?何だよ急に…」
強引に引っ張られても足を止めず走る二宮にマキはひそかに感心した。
「私もよく分かんないんだけど歩くんに何かあったみたいで今前を遥と風紀の松本が走ってる」
「それを早く言えよ!」
二宮には伝えた方がいいと判断して正解だった。
歩の名前を聞いて隆之が目の色を変えたように二宮もやはり一気に加速した。
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