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奪還
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その時だった。
ピンポーン、
チャイムは無視してそっと歩の腫れ上がった方の頬を撫でる。
「殴って悪かった…」
歩はその手を避けるように顔を横に向けたが、すっかり大人しくなった亮一の姿にどう接したらよいのか分からなかった。
ピンポーン、ピポピポピポ…
…ピンポーン
イタズラなのか嫌がらせなのかひっきりなしに鳴るチャイムは玄関ロビーからではなく、玄関の扉越しから直接押されたものだった。
鳴り止まないチャイムの音に浅く溜め息を吐くと歩から離れて部屋を出る亮一。
もはや先程までの強引さや余裕のなさは微塵も感じられない。
亮一が出ていくと歩は少しホッとした。
身体のダルさは残るが大声を出したおかげで意識がハッキリしてきた。
上体をゆっくり起こそうと体に力を入れたその時だった―――
玄関の方がざわざわうるさい。男女の言い合う声。
ドタドタ荒々しい足音が歩のいる寝室に近付く。
「歩!?」
寝室のドアが開いた瞬間、この場所にいるはずのない声にドアの方に顔を向けた。
夢かもしれない。もう会えないと思っていた大好きなあの人が立っていた。
その姿を網膜に刻みつけようとしたがすぐに視界が滲んでしまう。
すぐに二宮はベットに駆け寄り歩を抱き締める。
洋服越しに二宮の匂いがする。
「……二宮くんだぁ……」
なぜ二宮がここにいるか、などはどうでもいい。また会えた。
抱き締めてくれる腕が、匂いがこれが現実だと告げている。
歩は涙を拭うのも忘れて抱き締められた腕の中で微笑んだ。
抱き抱えたまま歩の上体を起こした二宮はそっと顔が見えるように体を離す。
途端に二宮が眉根を寄せる。
「この頬、どうした?」
親指の腹でそっと撫でられる。
ピリと痛みが走り肩が跳ねた。
先ほど亮一に叩かれた頬は熱を持ち、うっすら赤く腫れている。
歩にとっては叩かれたことはもう気にしてなかった。亮一もすぐ謝ったし。
カッとなって手が出ただけだろう。怒らせた自分にも少しは非がある。
返答に迷っていると二宮の視線は歩の頬から首筋に下がる。
何かを見つけてどんどん表情が険しくなり、急に部屋を出ていった。
歩は何が起きたのか分からず大きな目をぱちくりしている。
二宮と入れ替わるように今度は隆之が入ってきた。
「歩、無事か?」
隆之が壊れ物を扱うように優しく抱き締める。
「何してるんだ、全く。
こっちの心臓が持たない」
溜め息が混ざっているが声色は柔らかい。
「……ごめん」
頭を撫でる手が髪をときはじめる。その心地よさに気だるいのも重なって再び眠りに落ちそうになっていた。
「ギャー!!にのっちやめなって!
ちょっとちょっと!!」
鈍く何かがぶつかる音とマキの大声がリビングから聞こえてくる。
隆之に肩を借りて、半分抱き締められるような形でリビングに足を運ぶ。
真っ先に目に入ったのは二宮の背中。
何かに馬乗りになってガツンガツンと殴っている。
その腕を両手で掴んで止めようとするマキ。
少し離れて静観する遥の瞳は心なしか潤んでいた。
もう一度二宮を見るとマウントをとられているのが亮一だと気づいて歩は慌てた。
普段の二宮からは想像もできない光景。
「二宮くん!?やめて…」
駆け寄ろうとして隆之の肩から離れた途端足に力が入らず床に膝から崩れ落ちた。
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