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初恋の行方
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「その人が好きで好きでたまらなくて気持ちに嘘がつけなくなっちゃったんだって。
誰なんだろうね~?そのにのっちの心を奪った人は」
言いながらマキはちらちらと歩に視線を向けたが当の本人はその意味に気付くことはない。
そんな余裕はなかった。
ガンと鈍器で頭を殴られたような感覚に陥る。
顔が青ざめていくのが自分でも分かった。
茜が保健室で言ったことは正しかったのだ。
『二宮には他に好きな人ができた』
茜がいるから、と振られたことはただの断り文句だったのか…
もう二宮が分からない。
亮一の部屋で抱き締めてくれたことが嬉しかった。血相変えて部屋に入ってきてくれたことも。
好きな人がいるなら、最初からそう言って欲しかった。
俯いた先の地面がぽたりぽたりと雫が落ちて色を変える。
「歩くん?」
不審に思ったマキが声をかけたが歩は走り出していた。
浴衣が足にまとわりつく。
慣れない下駄に転びそうになりながら走って―――――
気付くと沿道外れた空き地にいた。
草木生い茂る…と言えば聞こえはいいが行政もここまでは行き届かないのか、手入れもされていない草木が無法地帯のように好き勝手に生えている。
ちょっとした雑木林のようだ。
あんなに賑わっていた沿道から一本通りを外れただけなのに驚くほど静かで寂しいくらいだ。
乱れた息のまま足元をくすぐる雑草を踏み分け木々の隙間にしゃがみこめば外からは誰も歩の姿は見えないだろう。
――――悲しい。
何が?と聞かれたら答えは簡単だ。
二宮の隣にいるのが自分じゃないから――――
どこまで自分は女々しいのだろう…
何度も諦めようとして
諦めきれなくて
傷付いて
そんなことも会えば帳消しされてしまう
「……ふぇっ………ふっ……うっ……」
膝をついて泣き崩れていた。
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