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おまけ①
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その①ある雨の日―――
朝のニュース番組で女性アナウンサーがにこやかに梅雨入り間近だと伝えていた。
しかし今日は梅雨入り前の貴重な晴れ間が見えると付け加えていた筈だ。
二宮は黒板に教師が書き連ねた数式をノートに書き終えると窓の外に視線を移した。
晴れ間が見える筈の空は朝から曇りよどんでいて素人目でも「これから雨が降るでしょう」と予報できそうだ。
女性アナウンサーを責めるわけではない。彼女たちは与えられた原稿を笑顔で読み上げただけだ。
しかし今日は放課後に可愛い恋人との貴重なデートの約束がある。今日くらい晴れてほしかった。
二宮は「晴れ間が見えるでしょう」と朗らかな笑顔を振り撒いた女性アナウンサーを思い出し嘆息を漏らした。
◇◆◇◆
朝からの怪しげな曇り空は回復の兆しを見せることなく午後には一層、雲は厚みを増し湿った空気が漂い始めた。
朝からお天気お姉さんを信じた二宮はもちろん傘なんて持ってきていない。
ポツポツ降りだした水滴が窓に当たるのを眺めて本日二回目となる深い溜め息を吐いた。
何だか溜め息の分だけ気分も滅入ってしまいそうだった。
終業のチャイム音と共にクラスメートの数人が自分の机の周囲に集まる。
「二宮~何か元気なくね?」
「にのっちが元気ないとうちらもつまんないよ~」
級友たちに指摘されるほど表に出ていたとは…
二宮は笑って自分の今の気分も紛らせた。
「うわっマジで顔に出てた!?なんか雨だと調子が出なくてさ」
二宮の笑顔に吊られて周りも笑みがこぼれる。
「雨だからか~でも分かるな。にのっちってバリバリ晴れ男っぽいしぃ」
「言えてる!!さすがの晴れ男も梅雨には勝てないかぁ~」
「ははっ、何だよそれ」
雨は苦手だ。
大好きなサッカーはできないし、服も靴も湿るし、朝セットした髪も湿気でへたる。
良いことが少ない。
勿論農作物には恵みの雨だとか言われるし雨水はダムの貯水率うんぬんに関わる大切なものだとは分かっているが晴れか雨かどちらが好きかと訊かれたら二宮は迷わず晴れを選ぶだろう。
そういえば、愛しい恋人はよく自分を太陽みたいだと言っていた。向日葵のような笑顔を浮かべて。
あの笑顔に照らされているのは自分の方だ。
向日葵は太陽の方を向いて花を咲かすと言うけれど太陽だって向日葵が余所に目を向けてしまわないか心配で向日葵から目が離せないのだ。
向日葵があまりにも魅力的だから。
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