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act.9
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あれから、早くてもう数年が経った。
俺は今年で26になるし、香西は27になる。
俺は、雑誌編集社に勤務する事になって、香西は今も変わらず、モデルの仕事をこなしている。
あの時に比べたら、テレビの露出は減って、もっと高みの、キャットウォークを歩くような本格的なモデルになった。
もちろん、すれ違いの生活は多いし、俺も納期前になれば帰れない事も多々増えた。
喧嘩もするけど、次の日には仲直りする事が出来る。
香西は汚名返上と言わんばかりに、今までのだらしない生活を改め、俺のためだけに生きると誓ってからは、まるで人間が変わったように魅力的になった。
今までよりも、魅力的になってしまった香西に、俺は時々不安になるし、また帰って来なくなったらどうしようと、嫉妬で不安に思う事もある。フラフラ遊んでいた時は、そんなに気にもならなかったのに、むしろその気持ちを殺す事が得意だったのに。
今は、俺だけという優越感がちょっとだけ憎たらしい。
「・・・ういー、帰った」
「お、おかえり!」
「ただいま、うい」
にこりと笑って玄関からリビングに通じる扉から、顔を出す香西に俺は作っていた夕飯の火を止めて、駆け寄って行く。
広くて大きな腕は、今はずっと安心感があって、素敵だ。
「玲王、寒くなかった?」
「家あったけーし、ういがいるから余裕」
「ご飯食べよ!」
「おう」
おかえりのハグをして、着替えに自室に行く香西の背中は今は、なんだかあの時よりも確実に頼もしくなった。
きらびやかなオーラも、カリスマ性も、何一つ陰りは見えない。
コンロの火を点火しながら、これからもずっと一緒にいられたらいいなと、俺は漠然と思った。
ーENDー
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