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母と狗(8)
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子供になんらかの影響があればいけないと、なんてことをしてしまったのかと、晴子は悲しみに明け暮れたが、それでも吉春を産み、育てていた。――あのときまで。
晴子は倒れていたところを発見された。
治療に全力を注いだが、三ヶ月後に晴子は逝去した。
「吉春。あなたの母は、あなたを捨てたりしていませんよ」
「うん……、解った……。じろ、とこの家の、関係、は……?」
「私は神です」
「え、あ、ああ……?」
神は人の世に現れるという。そして次郎は、暇潰しに来たと言う。
街をブラブラと歩いていたそんなとき、『犬神』に出会ったらしい。犬の生首は次郎に襲いかかったが、神の力で跳ね返した。しかし怨念は残ったままで、次郎の隙をついてそれらは体内に侵入したようだ。
危うく死にかけたところを『九白』の者に助けられ、お礼としてその家に富と繁栄をもたらすようにしたという。
長い長い年月を怨念とともに過ごした次郎は、その影響で犬ミミとしっぽを持つ『狗神』になってしまったということだ。
「は、伴侶、の話は? 『狗神』に気に入られた者は、伴侶になるんだろ?」
「人の言葉は変わるものです。私も男ですから、女体に反応します。ですから、何人もの女と一夜を明かしました。ときには神の子を宿したいという物好きな女もいましたね」
「子供は、できたのか?」
「ええ。しかし神の血は強すぎるのか、母体はほぼ壊れました。精神も肉体も含めて。神であっても、してはいけない領域があります。自然の摂理を乱してはいけない。壊れたものを直すことは、私にはできません」
次郎はそのときを思っているのか、寂しげに笑いながら吉春の手を握った。
「私と『伴侶』になろうとすると壊れてしまいます。あんな姿は見たくないのでもう何百年も交わっていませんから、受け継がれている神の血は薄くなっているはずです」
「オレは……? 次郎としてるのに、変わったことはないぞ? その……さっきはゴム、着けなかったしさ……。だから中じゃなくて、外に出してくれた、けど」
「それは私が吉春を愛しているからです」
「は……? な、なにそれ。どういう意味なわけ?」
「そのままの意味ですよ。魂ごと愛しています。そう愛したいと感じたのは吉春が初めてです。そして吉春を愛して解ったことですが、女たちが壊れてしまったのは、表面上を愛していただけにすぎなかったからでしょう」
「あ、愛っ……えっ、ええっ!?」
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