アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嘘と本当
-
「…あ、幸一こっち」
すでに改札の向こうにいるらしく、俺に手を振る
そんな俺は、かっすかすな改札を通る
「…爽太」
会うのは昨日ぶりで、声を聞くのはさっきぶりで、そんな時間は経っていないのに、なぜか無駄にドキドキと緊張してしまう
ここまでの道のりどれだけ緊張しながら来たんだろう…
緊張に緊張が重なって、もはや心臓が止まったみたいだ
「おはよう」
そんなこいつは、昨日のことも今朝の電話のこともまるでなにもなかったかのような、爽やかな笑顔で俺に笑いかけた
思わず、ムッとしたくなる気持ちを抑え、おはようと返す
「えらいね、ちゃんと来た」
なぜか意味深に笑う爽太に、俺は少し思い当たる節があるので黙殺した
「じゃあ行こっか」
「ああ…」
そして俺達は、一緒に並んで歩き始めた
「…」
ここでやはり無言になってしまうのは、仕方ないことなのか…
でも、本当は、俺は爽太に聞きたいことがたくさんある
けど口から言葉を発せないのは、俺がただの臆病ものだからだ
そんな自分に嫌気が差す
「幸一、昨日ちゃんと寝れた?」
「…??」
なぜか急に爽太が足を止め、顔をぐいっと近づけた
俺は、驚いて、半歩下がってしまう
けど爽太は気にする様子なく、俺の顔をじーっとみつめ、目の下あたりを指先でポンポンとさした
「クマあるじゃん」
「え?」
俺は目の下を指先でゆっくりと撫で、頭をフル回転させる
昨日ちゃんと寝れた?クマがある?
俺は考えて、たどり着いた答え…
それは、多分…
「な、んもねえよ」
「今言葉つまったじゃん」
その言葉に、肩がギクッと反応してしまう
そんなオーバーすぎるリアクションを爽太が見逃すわけがなく…
いや、元はと言えばこいつのせいだ、俺は悪くない…
そう勝手に決めつけ、謎の冷や汗でまみれていると、爽太は、じーっと怪しい目で見続け
「なに、もしかして遅くまでえっちな動画みて興奮して眠れなくなったんじゃ…」
「は?」
「それでクマできちゃうとか、幸一のえっち〜」
こいつこんなキャラだったっけ?
しかも無視したうえに、俺をばかにしやがって…
いつか絶対しずめる…
で?どんなのみてたの?なんて聞く爽太に、ため息が漏れる
……ん?……いや、でもこれはこれでよいのでは?
このふざけた空気に適当にのれば、理由を話さなくてもいいかもしれない…
「…ああ、まあ、実はな……」
「ふーん?本当にみてたんだ?」
そっかーなんて言いながら、頷いた爽太はくるりと反対方向を向き、再度ゆっくりと歩き始めた
俺は、なんとかしのげた…なんて安心してれば、爽太は歩いていた足をピタッと止め、勢いよく振り向いたかと思えば、思いきりずいっと俺の腕を強く引っ張った
「えっ…」
「なーんて、俺が言うとでも思った?」
バランスがくずれた俺を受け止め、
爽太のばかにしたような黒い声が、俺の耳元で囁かれた
「本当の理由は?…ねえ?教えてくれないの?」
この、聞いてくるくせして、絶対答えさせようとしてくる爽太の言いように、俺は生唾をゴクリとのむ
「だから、さっき言っ…」
「そっかー、本当なんだね。じゃあ質問変えるね、幸一がみたえっちなビデオと、俺達がしたえっちなこと、どっちのほうが幸一は好きなの?」
「はっ…」
爽太は、顔を近づけてくるので俺は逃げようと、引き下がる
こんなところ見られたらどうすんだよ…っ
登校の道の途中で、朝早いからか人通りは全くないが、万が一があるのに…!!
「そこに映ってた女の子かわいかった?それとも、男の人、かっこよかった?」
そんな爽太は気にせず言い放ち、
なぜか、男の人、を強調してきて、俺はますます意味がわからなくなる
「何が言いたいんだよ…?」
「…幸一が本当のこと教えてくれればいいんだけど」
もしかして、嘘ってばれてるのか…
爽太は見透かすような目で俺をただただみつめた
その視線に耐えられなくて、でも言葉にするのが恥ずかしくて、顔が一気に熱くなる
「…だ、って」
そこまで言って、俺は黙る
言うな…言ったら多分いろいろおわる
「だって…?」
爽太の艶めかしく誘う甘い声に、俺は、ぐぐぐと爽太を睨みつけた
そして俺は、目をぎゅっとつむった
もういい、こいつのせいにすればいい
俺は悪くないんだから…っ
「お前が昨日、電話しなかったからだよ!!!!!」
そんな俺の大きな声が、静かな道に響き渡り、爽太の目を丸くさせた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
93 / 164