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可愛くない後輩、意地悪な先輩 01
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さらさらと風に揺られる金色の髪の毛は、太陽に照らされて透き通って見えた。
ただでさえ変わっている髪色なのに、滑らかな白い肌や色素の薄い綺麗な瞳がいっそうその人の存在感を増していた。
*
「君の演技には貪欲さを感じるよ。いい意味でも、悪い意味でもね。期待してるよ、松永君」
“合格”と社長に言われ晴れて所属事務所が決定した訳だったが、あまりにあっさりと事が進んでいった事に凜太郎は驚きを隠せないでいた。
はっきり言って声優になるつもりなんて殆ど無かったからだ。
というのも、凜太郎は特別アニメが好きな訳でもなく、テレビもよく観る方ではない。
加えてオーディションを一緒に受けた人達のように養成所や専門の学校に通っていたわけでもない。
ド素人である凜太郎が事務所のオーディションを受けるきっかけを作ったのは実の姉であった。
「あの、俺、演技の勉強とかちゃんとしたこと無いっす…」
「もちろん今からレッスンをしっかり受けてもらうから大丈夫。頑張ってくださいね」
経験ゼロの俺がこんなにも、あっさりと受かって良いものだろうか。いや、よくない。
一緒に受験したひとりが言っていた。ここの事務所の社長は現役の声優で凄い人らしい。
ごめんなさい、俺は存じ上げませんが。
社長がニコリと笑ったので、つられて凜太郎もぎこちなく笑みを浮かべた。
「さっきから凄い顔だね」
「…全然笑えないっすよ」
「まぁまぁ。あ、そうだ、佐倉に挨拶しておいで。今日は丁度ここに来てるはずだから」
佐倉雅。ここ、『アイキャッチング』に所属する、人気上昇中の若手声優。これは、ネットの受け売りだが。
言わずもがな、凜太郎が佐倉雅の事など知るはずもない。
佐倉なら多分屋上にいるよ、と社長が言っていたので屋上へ向かった。
そして、そこで初めて佐倉雅と対面した。
声優と聞くとどうしても表に出るイメージは無く、どちらかというと地味目な人物を想像していた。
しかし、目の前の佐倉はどう見ても、はっと目を引く美しさを持ち合わせている。
ついつい言葉を忘れてしまう程魅力的だ。
「誰?」
「あっ、えっと、今日からお世話になります松永凜太郎です」
「オーディション、受かった子か」
手摺りに寄りかかっていた佐倉が身を起こし凜太郎に近付く。
177cm程の凜太郎と比べると佐倉はいくらか背が小さかった。
ずかずかと佐倉がなかなかの勢いで近付いてくるので、思わずたじろいで後退すると親指と人差し指で頬を挟まれた。
「…何すか、マジで」
「絶対お前なんかに負けんからな…!俺の役とったら殺す」
男にしては華奢な手で頬を摘まんで、突然の宣戦布告。いや、まだ俺、役とかつく以前の問題だから。
超新人の凜太郎に闘志を剥き出しの佐倉は甘く澄み透った声の持ち主だった。
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