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可愛くない後輩、意地悪な先輩 02
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「俺、医者になんの、やめる」
「はぁ?!」
凜太郎が有名大学の医学部に合格して一年が経とうとしていた。
親が敷いた医師になるためのレール。大人しく乗っていればいいのに、と姉のリナが呆れたように溜息を付いた。
「まぁ、アンタにも自分ってもんが有るもんね。今まで反抗して来なかっただけ凄いと思うわ」
呑気に珈琲を飲むリナは、学生の頃、滅茶苦茶両親に反抗していた。
凜太郎は後継ぎになる予定だけどリナだって勉強頑張らなきゃダメよって一緒に言われてきたからだろうか。
夜遅くまで帰って来ないわ、男とっかえひっかえするわ。
そうかと思えば急に結婚して、オタクになるわ。
訳わからねー、とこっちが呆れてしまう。
「で、あのクソ頑固なお父さんとお母さんはどうするわけ?ていうかさ、他に何かやりたい事があるの?」
「……いや、別にねぇよ」
「何の…!?うわー何それ。やりたい事無いのかー」
親に言われた通り勉強してきた。病院の後継ぎになるために医学部まで入った。他にやりたい事とか考えた事、なかった。
「あの親を説得するには何か別に凄い職業とかに就くしかないわね…一番って言葉とっても好きだからね、あの人達」
何でもよかったんだ。
ただ親の言いなりになるのはもう懲り懲りだった。
かと言って何かしようと考えた時、何も自分でやってこなかった事に気付いて凜太郎は急に怖くなった。
『松永君はさ、勉強もスポーツも何でも出来るしすごいね!』
すごくなんてない。俺は何もすごくなんてないんだ。
痛い程分かっていた。俺は自分の存在意義を見出したい、そう思っていた。
「…何かで一番になればいいんだろ?」
「そういうこと~」
そして数日後、ファックスで凜太郎の元に届いたのはいくつかオーディションの要項だった。
いやいやいや、何コレ、まじかよ…。
俳優、アイドル、タレント、お笑い芸人、声優。
思っていたのと違う書類ばかりだ。
いやこれ、絶対向いてないし、俺。
そう思ったものの、まぁ、力試しに、と凜太郎が受けたのが、
一番家から会場が近かった、声優事務所『アイキャッチング』のオーディションだった。
マイクの前で話すなんて、ましてや演技するなんて初めてだったというのに、あっさりと合格。そして今に至る。
両親にはリナがバレないようにしてくれると言っていたから大丈夫だということにしておこう。大学には休学を申請してある。親にバレるのも多分時間の問題。それまでに何か功績を残さなくてはいけない。
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