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可愛くない後輩、意地悪な先輩 06
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「…は?え…」
突然アフレコスタジオに連れて行ったらどういう反応をするだろうとにやけるのを我慢しながら松永を半ば無理矢理連行した。瀬目社長が選んだくらいだから松永は相当な実力の持ち主に違いない。しかし、佐倉だって伊達に声優をやってきたわけではない。ここで実力の差を見せつけてやろうと思っていた。
生憎、アフレコをするにも台本もアニメ映像も用意していないことに気付き、何かないかと鞄をあさり昨日収録したドラマCDの台本を読んでみることになったのは、つい数分前の話だ。
台本は二人のキャラクターの会話で成り立っているもので、ジャンルはライトなボーイズラブ。声優になって仕事として関わっている佐倉には幾らか理解があるが、松永がどうかなんて佐倉が知るはずもない。
「これ、台本や。マイクの前立って読んでみるで。お前も。 」
「あ、はい。」
ぱっと見ではBLCDの台本だなんて分からないだろう。
それより気になるのは新人声優、松永凜太郎の実力。
同じ事務所とはいえども今後仕事を取られるような事があると思うと…。
じゃあ、俺から読みますね、と凜太郎が言って、主人公の台詞が読まれていく。
凜太郎の声は中音域が綺麗に響きそうで、ブレのない真っ直ぐとした芯のような物も感じられた。
どこにでもいそうな声に聞こえるが、よく聞くとその中でも洗練されたものだと分かる。
声質は…丸か。
しかし、さっきからずっと主人公が話す場面ではあるが、良くも悪くも松永の演技は普通で、
特に素晴らしいと思うこともなくここがダメだという点もなさそうだ。
まぁ、普通に聞こえるってすごいことだとは思うけれど。
でも、何か特徴くらいないと仕事は回ってこないような厳しい世界だ。
松永がこのままでやっていけるとは言い難い。
特にすごいと感じることもなく、ふーん、なるほどという感じで聞いていたのが気に入らなかったのか、目があった瞬間、松永に睨まれた。
「…俺は、アンタのこと、好きだよ」
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