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その男、危険な香り07
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そんな噂とは正反対の逢沢であったが、それなりに気になる相手は度々いた。
しかしどれもが時間が経てば存在も忘れるほどに小さなもの。
周りの同級生達は、誰に想いを寄せているだの恋しているだのと頬を朱色に染め騒いでいるにも関わらず逢沢はどこか乗り気になれずにいた。ましてや性に興味津々の年頃であるクラスメイトとの会話は時に苦痛をも与える。
やれクラスの中でどの女子が一番可愛いだの胸が大きいだのと軽いものから下品な話まで。
そんな会話を聞けば聞くほど逢沢は胸に氷の杭が打ち込まれるようだった。
会話に夢中になり熱をあげてく友人たちとは反対に、逢沢は最後には苦笑いを浮かべる事もせず一人窓の外を見ていた。
皆、異性を愛す。
それは至極当然のことで、自然の行い。
では自分は?
昔は、同じ性癖を持つ人間がこの世界にいるという事実に救われた。いつか、出会えると信じて。クラスにもひとりやふたり存在するものだと思い込んで。
だが実際はそんなに優しくはないのだ。
逢沢と同じく同性が好きだと口にする者など一人も居ない。
ましてやそんな事を口にしてしまえば途端に蜘蛛の子を散らす様にこの友人達も目を輝かせ熱い視線を送る彼女達も離れて行くだろう。
そして両親でさえ、もしかすると嫌悪し軽蔑するやもしれない。
おかしい。異常だ、と。
昔友人に尋ねた時と同じように汚物を見るような目で見られて、うえーと舌を出し、人と違う事に悩む悲しみも苦労も知らずに「おかしいだろそんな奴。友達になりたくない」と心無い事を言われるかもしれない。
そんな事を考えては日々怯えた。
独りになる事を逢沢は心から怯えていた。
その反動からか、いつしか逢沢は友人と自ら距離を置き、家族からの声からも耳を塞ぎ噂通りの孤高の王子様へとなる。
その王子様の中身は孤独に怯えた、どこにでもいる繊細な少年であったが。
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