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その男、危険な香り10
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「結城さ~ん! お疲れ様ですぅ」
「ありがとう。小林さんもお疲れ様。俺が居ない間何か変わったことはあった?」
「特にはぁ。あ、でも一つだけ!」
「なにかな?」
「結城さんが出張に行っちゃって寂しかったですよぉ」
豊満な胸を寄せ、子猫の様に潤んだ瞳で結城を見つめる同僚に逢沢は嘆息した。
(小林さん強い。相変わらず懲りないな)
案件毎にチームを組むため部署の重要性は高くないが、一応人の多さから振り分けられている第一課の彼女はもっぱらの男好きとよく耳にする。
それもこれも、目の前で繰り広げられている明らかな媚びた態度が原因なのだが。彼女は女先輩達に睨まれようが、悪意のある噂を流されようが気にする素振りもない。
彼女のそんな強かな一面は、寧ろ脱帽してしまうと逢沢は思った。
結城はこの会社で一番人気の男だ。
入社当時からあちらこちらで彼の噂を耳にしてきた。
なので勿論、彼に想いを寄せるのは逢沢だけではない。おまけに男である自分はただ見ている事しか出来ない。どれだけ想いが強かろうが同じ土俵に立つことさえできないのだ。
結城がいつか、魅力的な女性と幸せになっていく姿を、同性愛者である自分は見ることしか叶わない。
だからこそ、多くは望まなかった。
ただ傍に居られることで満足出来たのは、はなから勝ち目が無いことを身をもって知っているからだ。立場は弁えている。
だからと言って傷つかないかと聞かれれば、逢沢はきっと目を伏せて苦笑いを浮かべるだろう。
チリッ、と火の粉に触れた様な小さい鋭い痛みを感じて逢沢は一度深呼吸をした。
(大丈夫、こんなの慣れっこだろ)
瞼の裏にこびりつく昔の嫌な記憶を振り払うと再び待ち侘びた彼へと目を向けた。
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