アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
その男、危険な香り12
-
今も、これからある飲み会の席取りで誰が結城の隣を勝ち取るか。女性陣による戦いの火蓋はとうに切られていた。
結城が戻って来たということは今回の案件は上手く行ったということだろう。
その証拠に、結城と並んで戻ってきた米倉課長は花が舞うような笑顔を浮かべて打ち上げを催すことを大声で歌っている。
日頃から温厚で、優しい米倉課長だが今日は特に嬉しそうだ。
それもこれも、今回の大型案件の内容には長きに渡るであろう海外との専属契約も含まれており、しかし難しいと当初から噂されていた物を見事に勝ち取ってきたのだから、米倉課長も鼻高々であろう。
単純にお気に入りの結城が戻ってきたのが嬉しいということもあるのだろうけど。
何はともあれ、この案件に携わっていた逢沢自身もやっと肩の荷が下りたという事だ。
そんなことをぼんやりと考えながら、未だ結城の隣に誰が座るかと揉めている女先輩たちを見て逢沢は何かに似ていると首を傾げる。
(あ、雌ヒョウ! 肉食獣だ)
ぽんっと脳内に浮かんだ動物がしっくり来て、逢沢は一度そう考えるとオフィス内にいる女性が全て可愛らしく見えてしまいくすりと小さく笑みを浮かべた。
「何が面白いの?」
「えっ」
と、その瞬間。
不意に耳元から優しい声音が聞こえて慌てて振り返る。
すっかりと油断していた逢沢はガタガタと大きな音を立て、挙動不審な動きで飛び退いた。
「い、きなり耳元で話しかけないでください」
「なんで? 今みたいに腰が抜けそうになるから?」
「ッ、結城さん!」
眦を吊り上げて、きつく睨むと目の前に立つ美丈夫の顔が楽しそうに色を変える。
「ごめんごめん、そんなに怒るとは思わなかった。久しぶりに逢沢に会えたからつい、ね。俺が居なくて寂しくはなかった?」
「ついってなんですか。寂しいわけがない、むしろせいぜいしてましたよ」
「逢沢はつれないなー」
ふいっとそっぽを向くも、心臓は破裂するんではないかというほど早鐘をうつ。
結城に会うのは二週間ぶりだ。
もうそろそろ会えなくて干からびてしまうんでは、なんて馬鹿なことを思うほど渇望していた彼の笑顔が目の前にあって逢沢は綻びそうになる口元をキュッときつく結ぶ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 20