アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
その男、危険な香り15
-
その日、業務を終えたあと逢沢は辞職する事を真剣に悩んでいた。この職場に入社した理由はそれなりにあった。
けれど、職場でさえ上手く打ち解けられない自分が何を夢見ていたのかと、逢沢の心はその日ぽっきりと折れてしまったようだった。
この仕事は自分には向いてはいない。
もっと人と関わらなくても済む別の仕事に転職しよう。
誰にも迷惑かけずに済む仕事を、探そう。
逢沢はぐるぐると重りが胃の中を掻き乱す様な思いを抱えてその日は帰宅した。
そうして翌日、逢沢は目の前に立ち微笑む男を見てぽっかり口を開け、惚けてしまう。
「逢沢、今日から俺が担当するから宜しくな」
そう言って目の前で笑い、喋ることを忘れてしまったかのように立ち尽くす逢沢を見て「なんだ? 近くで見るとうんと可愛いな逢沢は」と言って笑ったのだ。
「生意気だ、陰気臭い」「あいつが居るだけで仕事のやる気が失せる」と態と逢沢に聞こえる様にして嫌がらせをしてきた人達の中で、初めてまともに逢沢の名前を呼び笑いかけてくれたのは、逢沢が一目惚れした結城であった。
その日から結城は何かと逢沢を気にかけてくれた。それだけでなく、人と関わりを苦手とする逢沢の代わりにさり気ないフォローをしては時にはからかい、逢沢と周りの人達を結ぶ架け橋になってくれたのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 20