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その男、危険な香り18
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一方、水島は逢沢の心境など知る由もない。
普段と変わらぬ態度で、隣に座る結城と会話を繰り広げていく。当たり前のように、昔からの付き合いを匂わせる親しみを含ませて。
(俺には、分からない話ばかりだなぁ)
ビールジョッキを片手に、逢沢はチビチビと唇に泡をつけた。
酒があまり得意ではない為、このような飲み会も、酒の場で起きる特有の雰囲気も苦手だ。けれど結城が居るならばとやって来たはいいものの、肝心の男はあっさりと水島に取られてしまった。
その心寂しさを紛らわす為に普段なら決してしない豪快な飲みっぷりを披露したところ、今一番敵だと認識していた男、水島に褒められてしまった。
「おぉ! 逢沢、いい飲みっぷりじゃねーか!」
「……このぐらい、余裕ですから」
全く持って余裕ではない。
だが、ここでひいてはまたひとつ新たに負けを認めてしまった気がして、逢沢はどうでもいい矜持の為に嘘をついた。
「あれ? 逢沢は酒が苦手だと思ってたんだけど?」
そして逢沢の見栄に気づいたのは結城だ。
「無理して飲む必要は無いんだよ」と、微笑まれ逢沢はアルコールで赤くなった顔を、ぶんぶんと勢いよく頭をふり否定した。
「大丈夫です」
(結城さんに情けないやつなんて思われたくないっ)
勿論、心の声は届きはしない。
そして逢沢の体が、本人の自覚がある以上にアルコールに弱い体質だったと知るのはこのすぐあとの事であった。
意地を貼ったところで碌でもない結果に繋がると言う事を同時に学びながら。
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