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その男、危険な香り19
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「全く、どうして苦手なのに無茶をするかな?」
「すみません……」
結城の肩に寄りかかりながら逢沢は今以上に身を縮めて謝った。
あれから水島に乗せられ、限界を遥かに超えたお酒によりパッタリと記憶が途絶えている。気づいた時には結城の肩にもたれかかって眠っていたようで、タクシーの中であった。
何処へ向かっているんだろう。ふと疑問に思いはしたが、うまく舌が回らない。挙句に今無理して意識を保とうとすれば間違いなく戻してしまいそうで逢沢はこれ以上何も言うまいと、ただ静かに時間の経過を待った。
隣で肩を落とす逢沢が叱られて落ち込む犬の様に見えて、結城は小さく笑みを浮かべる。
本来ならある筈もない耳はペタリと後ろに倒れ、尻尾は丸められている姿が見えた気がして、逢沢の頭をひと撫ですると誘う様にして引き寄せた。
「ゆ、うきさん……?」
「それだけ酔っていたら辛いだろう。いいから眠りなさい。説教はもう終わり。男の膝って所が既に罰にもなりそうだしね」
苦笑混じりに優しく囁かれ、逢沢は言われるままに結城の膝上へと頭を置く。
やはり鍛えている分硬い。引き締まった肌の感覚と、結城の爽やかでどことなく甘さを漂わせるコロンの匂い。逢沢はバクバクと高鳴り出した心臓に手を当て、瞼をとじた。
「寝心地の悪さは……言うまでもないか」
「い、いえっ。……す、素敵、です?」
「なんだそれ。おかしなことを言うね逢沢は」
クスクスと静かに笑われ逢沢の頬に赤みが増す。
女性に膝枕をしてもらった経験など勿論ない。しかし、妄想の世界で結城に膝枕をしてあげるシチュエーションならば幾度か夢見た。それがまさか、してあげる側ではなく、してもらう側になれるだなんて、どんな天国だろうかここは。
そんな事を考えてはフル稼働し始めた逢沢の心はタクシーが目的の場所に着くまで、少しも休むことは無かった。
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