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東堂を取り戻す~二次創作弱虫ペダル巻島目線
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箱根山、異変起きてんのか?
尽八の人生を奪って、縛りつけてんのに?
なのに異変てなんだ。
それ許し難いッショ!
俺は兄貴の許可取って、日本目指した。
空港には坂道と真波山岳が待っていた。
お兄さんから連絡もらいました。
東堂さんに会うんですか?
会えるんですか?
わからねえ。
けどじっとしてられなかったッショ。
おまえらもだよな。
はい!
とりあえず行くッショ!
強羅までは電車使い、真波行きつけのショップでマウバ借りた。
たまたまトレックだった。
金城さん、思い出しますね。
巻島さん、スパイダーしにくいでしょう。
か、借りもんだしな。
しなりかたもかなり違うッショ。
坂道もケイデンス上げにくそうだ。
でも真波はさすがに箱根の山のプリンス、うまく風に乗っていた。
立木の中に分け入る。
以前はこの辺で、尽八の意識捉えれたのに、今は全然感じない。
尽八!!
思わず叫んでしまう。
とそのとき。
微かに、微かに、気配が伝わってきた…
まき……ちゃん……
尽八!!
箱根に……呑まれ……たくない……
当たり前だ!
おまえは人だ。
人なだけじゃない。
自転車乗りだ。
山神という名の人間なんだから!!
およそ俺らしくもない、熱い怒りがこみ上げてきた。
箱根山!
パチ返せ!!
あいつのみこんだくせに弱ってるじゃないか!!
だったら返せ!!
要らねえだろ!!
叫んでるうちに怒りはどんどん増大していく。
俺は本当に怒髪天に衝いていた。
風が巻き、俺たちを威嚇するけどいささかも怯まねえ。
パチ返せ!!
真波も坂道も同じ目をしている。
東堂さんを返せ!!
返してください!!
それでも唸りはますます強まる。
尽八の声は逆に弱まってく。
ありがとう……でも……俺が離れたら……きっと……
箱根山は本格噴火してしまうとでも言うのか!?
尽八の思念が沈黙する。
当たりなのか。
尽八は人の身で、神奈川全体を守らなきゃならないのか!?
それは違うッショ!!!
ありがとう……巻ちゃん……
来てくれただけで……
来てくれただけで……
俺は……
報……
報われたとか言うな!
言うなよ!
俺らまだまだ走るんだ!
尽八!!!
そうなのだ。
俺なんで唯々諾々と、尽八のさだめ受け入れてたんだ!
ユノヒメの人身御供がおまえである必然はなんだ!!
東堂庵なんか捨てればいいんだ!!
箱根捨てろ尽八!
俺と、
俺とイギリスで暮らすッショ!
いきなり雷鳴が轟いた。
雷鳴の中に尽八のシルエットが浮かび上がった。
巨木に磔刑のキリストよろしく張り付けられている。
半ば巨木と同化してる。
こんなことが許されていいはずがない!!
その通りです。
そう言って現れたのは手嶋だった。
超長身の青年を連れている。
葦木場拓斗。
二人ともなぜか、青く光っている。
しかも、二人が現れると同時に、真波も青く光り出したのだ。
そんな真波を二人は見ず、見ぬままに手嶋は手招いた。
真波来い。
坂道も。
巻島さんもこちらにきて、一緒に念じてください。
俺ら男体山から、パワー分けてもらって来たんで。
ああ……なんとなくわかってきた……
そう言った真波が、手嶋の前に進み出、巨木(と尽八)のほうに向き直った。
そして真波は山に酔うときの表情で、こう唱えだしたのだ。
二荒山(ふたらさん)の大己貴命(おおなむち)より箱根山の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)へ伝言(ことつたえ)預かり居り。
葦木場拓斗も同様に、うわずった声で続ける。
夏に若者が山頂競り合いて、われらを大いに楽しませり。
手嶋も同様に続ける。
先の日に翼持つ者が。
明くる日に奏での者が。
そして三日目この者が山頂征したり。
われら三者二荒山の大己貴命より箱根山の瓊瓊杵尊へ贈り物を預かり居り。
これ箱根山を守り平らげる力なり。
我らが持ち寄りたるこれら贈り物を以て、何卒(なにとぞ)何卒、
ああ、ここで言うべき言葉は、俺にも坂道にもわかったッショ。
人、東堂尽八を、我らの許へ戻したまえ!
カッと
再び雷鳴が光ると。
腰まで伸びた髪を、かろうじてカチューシャで押さえているだけの東堂尽八が。
俺たちの腕の中に突然いたッショ。
青い光も消えてたッショ。
***
今尽八は、俺とロンドンで、兄貴の会社の社員やってるッショ。
さすが湯屋の若旦那様だけあって口の聞きかたはなってないが、それを補って余りある、セレブ情報が宝ッショ。
手嶋たちが男体山~二荒山は男体山の別名ッショ~からパワーもらってきてくれたおかげで、ユノヒメの呪縛も解けたみたいだ。
にしても本物の山神たちが手嶋たちの頑張りを寿いだってのはすごすぎッショ。
東堂庵も安泰。
箱根山も安泰。
その代わり、来年坂道たちは、次のインハイでもいい勝負して、神様たちを喜ばせなきゃならなくなったッショ。
でも大丈夫。
おまえらは神の愛で子。
次のインハイがどこに決まろうと、おまえらの走りはきっと、その地の神様シビレさせるの絶対ッショ。
頼んだぜ!
付記
手嶋さん。
どした坂道。
僕思ったんですけど神様って、ほんとにちゃんと見ててくださるんだなって。
?
『そして三日目この者が山頂征したり』。
記録上は葦木場さんでも、神様は手嶋さんを覚えててくれるんだなって。
すごいですよね!!
小野田に言われて初めて気がついた。
俺の夏。
無駄じゃなかったんだな。
全然無駄じゃなかったんだな。
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