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01-1
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「起きてー、ね、ひーなーたー」
そう枕元で騒ぐのは幼馴染の朝日奈航生。
寝汚い上に寝起きが悪い俺を毎朝起こしにきてくれる、そんな不思議で珍しいやつ。
「陽向?おーい」
未だに目を瞑って寝たふりを決め込む俺を揺する。
その揺れすら眠気を誘う。あー…眠い。
「ねえ、陽向ー。おばさんが玉子焼き作ってくれたよー?」
「………」
"玉子焼き"
その単語にぴくりと反応してしまう。
母さんが作る玉子焼きは牛乳が少し入ってて、あんまり甘くないのが特徴。
航生の家のは出汁巻きが多い。あと甘いヤツ。
「うちの母さんも出汁巻き持たせてくれたぞ〜?」
おーい、と布団から出るか迷ってる俺の上に倒れ込んで、じたばたする航生。
航生ん家の出汁巻きもあるのか……!!
「お弁当にも玉子焼き入ってるって〜」
「起きる。つーか起きた。どけ。」
今度は俺がじたばたする番。
玉子高いんだもん、と一年の時はほぼ毎日入っていた玉子焼きがなくなった。
それからは月に二度ある玉子焼きの入ってるお弁当を楽しみにしているのだ。
「どけ!!!航生!!」
「え〜、やだ。俺の呼び掛けよりも玉子焼きに釣られるとか酷い」
「今に始まったことじゃないだろ!」
「そうだけど…。そうなんだけど!!!」
「はいはい。航生好き〜。毎日ありがとな」
こうして駄々をこねはじめると長いので、痛めないよううまく体を捻ってキスをする。
俺の行動にびっくりしたらしい航生は顔を真っ赤にさせて俺の上から退ける。
よしよし。
「……なぁ、悪かったって」
「そんなんで済むと思わないでくれる……?」
普段はおおらかでにこにこしてる航生に睨まれる。
こうやって航生に睨まれたことあるヤツなんて俺くらいだろうな、と思うことで現実逃避したくなる。
航生が怒っている理由は簡単。
俺が前髪を少し切りすぎたから。
いつも目にかかるぎりぎりの長さだから朝少し切るようにしてるんだけど、それを今日はちょっとやりすぎた。
「……つーかさ、なんで航生が怒ってんの」
「その前髪じゃ陽向の顔丸見えじゃん……!!」
「はあ……」
「自分の顔の綺麗さわかってるの?!」
「普通だろ。俺の顔綺麗って言うのお前だけだよ」
むすっとした顔でいまだ俺を睨む航生の頬をつつく。
俺の顔なんかより、航生の顔の方が綺麗なんだけどなぁ……。
「で?いつまで怒るつもり?」
「いつまでもー。ただでさえ最近、綾瀬くんかっこいい!って噂になってるのに……!」
「わかったよ。悪かったって。ごめん。」
「許さないもん。」
ふん!とそっぽ向いた航生。
俺なんか毎日のように航生くんと幼馴染みとか羨ましい〜♡って言われてんのに。
はぁ、と溜息をつくと、びくっと反応して。
「……ひな、怒った?」
「なんで?」
「ひなが溜息つくのは怒ってる時だけだから…」
「怒ってはいないけど」
「けど?」
「呆れてる。俺だってお前の幼馴染みいいなって言われんぞ」
「本当に?」
「ほんと。だからいい加減にしてくれ。」
「……わかった。ごめんね」
俺よりほんの少し背の低い航生に頭を撫でられる。
こうされると落ち着くしかない。
航生に悟られないように静かに息を吐く。
今日も、面倒なんだろうなぁと思いながら。
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