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とあるオフィス〔販売部門〕の危機的状況①新人~オリジナル
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三島夏樹
俺は、人の思考が読める。
妻が赤ん坊のおむつかぶれのことを言いつつも、実は二丁目にできた懐石レストランの個室利用がしたいと思っていることも、妻の母が、赤ちゃん、いつでも預かるわ、と言いつつ、頭の中では俺の裁量を使って、自分に、最新型の洗濯機を買ってくれないだろうかと思ってることもわかってる。
この力を小出しにすることで、俺は営業成績を、いつもトップに置くことができていた。
目立たず、いつもギリギリで。
さりげなく勝つのが俺の流儀なのだった。
だが最近、俺を脅かすコが現れた。
新人の、三島夏樹だ。
ほわわんとした印象の、新卒トランジスタグラマー。
乗っかってる顔はいかにもコドモコドモしてる。
どっちかというと天然で、初日は青い顔でメモばかり取ってた。
それが最近ヒット飛ばしまくる。
洗濯機でも冷蔵庫でも、エアコンでも冷風機でも、ドライヤーでもひげ剃りでもレディースシェーバーでも、なんでもさらっと売ってしまう。
それも新人は、五千円くらいのをひーふーいって売るのに、三島ときたら、涼しい顔で、五万、六万、時には十万超えの商品をご購入いただいてくるのだ。
上司は目を白黒させて言う。
あのお客様はきみの…、ご親戚か何かか?
今日、初来店でいらしたようです。
あのお客様に何か特別なサービスを申し出たのか!?
そんなことはしてないです。
ただあのお客様、ものすごい暑がりなのに今朝エアコンが壊れたそうで、たまたま取り付けの方が一組、キャンセル出て、おからだあいてらして。
今は夏だ。
そんなことは、
絶対に、
ない。
それでも鳥島の前でだけ、そういうことは頻繁に起こり、
気づくと俺はたったひと月だけだが、総売上を抜かれていたのだった。
笹島瀬以
最近、三島が、ちらちら俺を見てる。
こっちが気づいて見返すと、さっと視線を逸らすが、気づかなかったふりで様子を伺うと、また見ている。
なんなんだこれ。
同僚の田口恵子~俺とともに三島のトレーナーをつとめている~が笑いながら通りかかった。
あのこ、笹島瀬以のファンなんだって。
あなた結構似てるって。
言われてみればちょっと似てるかもねー。
笹島瀬以?
except?
あああの曲。
レコード大賞ダンスミュージック部門受賞だったっけ?
一世風靡した…
俺が?
似てる?
似てるか???
ぎょっとなってるとこへ、視線の圧がきた。
振り向くと、やっぱり三島がこっち見てた。
俺さ…
笹島瀬以似てる?
妻は迷わず頷いた。
笑んで。
露木
どうしよう。
露木が好きだ。
妻も子もいる。
俺はノーマルなのに。
露木ーーー!
露木良介。
二つ上。
一時は嫌みな奴とか思ってたけど、こいつも俺と同じ
仕事の鬼
だとわかってからは、めっちゃ気に入りの仲間なのだ。
なのに、どきどきする。
何でだ。
長身だから?
いやいやいやいや。
メガネだから?
いやいやいやいやいやいや。
喉仏も、胸板も、ああ、なんだか色っぽい。
次飲みに行ったときに、さりげなくしなだれてみ…
あん?
こんな…
こんなの俺の発想じゃないぞ…
はっと、目を上げると、三島と目があった。
おまえか!?
思わず思念で送ってしまった。
おまえ!
思考介入もできるのか!?
三島夏樹がニヤリと笑う。
できますって顔だ。
できてもするな!
え。
俺の足が、勝手に俺を、露木のいるフロアに向かわせる…
この女。
思考介入だけじゃない。
行動介入できるんだ…
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