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とあるオフィス〔販売部門〕の危機的状況②妻の母~オリジナル
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品子さんは苦手だ。
とても通俗的で、買い物の価値は常に、いくら安くなったか。
娘の恋人が家電関連と知ったとき、品子さんが最初に言ったのは、
薄型テレビどのくらい安なる?
だった。
それはいい。
家電量販店は、値切る場所だと思ってるお客様は多いから。
ただ結婚後、何かほしいものがあるときだけ、こどもの面倒を見に来るのはやめてほしいと思っているのだ。
俺は人の表層思考が読めてしまう。
そんなときの品子さんは、子供を抱き寄せても、妻を叱っても脳内がほしいもので満ちていて、例えば冷蔵庫冷蔵庫冷蔵庫、美顔器美顔器美顔器、旦那のシェーバー!ってなぐあいなので、俺はそれにあたってしまうのだ。
通常の疾患で言えば胃もたれとか二日酔いに近い。
今度はなんですかあ?
あ。
また義母さんですね!?
新人の、三島夏樹にからかわれる。
こいつも軽テレパスなので、隠し事ができない。
そんなに望んでらっしゃるんだから、社販価格にして差し上げればいいのに。
駄目だ駄目だ駄目だ。
そんなにも下げられるって知ったら、ご近所の注文まで取って来かねない!
お客様は神様…
正価のお客様はな!?
ちょっと喧嘩腰になる俺の脇を、同僚の田口恵子~俺とともに三島のトレーナーをつとめている~が笑いながら通り過ぎてゆく。
今日も平和だ。
だが午後、平和は打ち破られた。
品子さんがご友人と連れ立って店に現れたのだ。
何だ。
到(いたる)さん、職場ここだったの!?
大きな声を張り上げ、ご友人には胸張って、
これね、娘聟。
めちゃめちゃ安くしてくれるから何でも頼み!
お義母さん!!
まずは洗濯機やな?
いきなり仕切りだした!!
ス、ストップかけたいが、傍目もある。
お義母さんにも体面があるだろう。
どう処理する。
どう…
お客様。
代田マネージャーはただいま接客中でございますので、よろしかったら私、三島が、商品説明承りますが?
が?に行動介入をかけたのだろう。
拍子抜けするほど素直に、義母たちはフロアを移動して行った。
そのまま二人で十九万ほど使っていったという。
新型の炊飯ジャー、お買い上げいただいちゃいました。
それと…
と小声になり、
この店舗のことを記憶から消しておきました。
まだしばらく、こちらにご在職のことは隠せると思いますよ。
ニヤリと笑って去ってゆく。
お、恩を売ったつもりだな!
お、俺だって、借りたままじゃない。
おまえの弱みも握ってやる!
絶対握ってやる!!
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