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見張る。
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授業開始のチャイムが鳴る5秒前くらいにキモ川が購買からダッシュで帰ってきた。
汗だくで眼鏡ズレててこいつマジで天性のいじられキャラじゃね?ここまでくると感心するな。
無事カイロを手に入れた俺は聞きたくもない松崎の英語を右から左へ受け流す程度のHPは手に入れた。
前の席の奴が休んでれば椅子に足掛けられて楽だったのにな。急に早退しねぇかなコイツ。
出席日数がアレなので嫌々授業を受けてるが、暇すぎてあくびが止まらない。
開始10分にしてそうそう眠気が襲ってきた。机に伏せようと前かがみになった時、胸元に違和感を感じ内ポケットにあったものを取り出す。
何でこんなとこにしまってんだと思って取り出したあとも、なんか他のとこにしまうのも面倒臭くなって同じ場所に戻したんだった。
このキモ川のキモいラブレターは、明日とか明後日とかその辺で返すことになってる。
「1週間俺の言うことなんでも聞け」って命令したあの瞬間は、本当に返してやろうなんて気は全くなくて。
さらに脅して泣かせてやろうとさえ思っていた。
けどこれ、読んでみると割と長い間片思いしてんだなって。
ルーズリーフ5枚(裏表)に長々と相手の長所語れるやつもそうそういねぇだろ。
はたから見ればとんだイカレ野郎だなって思うが、ここまで来ると相手の顔を拝みたくなる。
⋯うちのクラスにそこまでの美人はいねぇ。
いや、そもそも同じクラスなのか?
同じ学年だとも、同じ学校だとも限らないし、生きてんのか死んでんのかもわからない。
ラブレター見て、何かしらのヒントを得ようとするも手がかりはない。
「かっこいい」だとか、「好き」だとか。そんなありきたりな言葉。
モヤモヤしてきたので、前の席の奴の椅子を蹴って振り向かせ、問いかける。
「なァ、うちのクラスにかっこいい系の女子とか居たか?」
突然の質問に少々驚いていたが、数秒考える素振りをして、
「えっ⋯!?さぁ、わからないです⋯」
と答えた。
チッ。使えねぇー。
「ああでも、うちのクラスではないですけどラクロス部の先輩にならいました。ポニーテールの、美人でかっこよくて清潔感ある⋯」
「なんて名前?」
「寺内先輩です!ちょうど今体育やってて窓際からなら見えるんですよ!!」
「で?お前は時々そいつを見てると。」
「はい!すごく、いやかなり美人です!!」
と、喋り方がやや興奮気味になってきたので、
「いや、なんでお前そいつのクラスの時間割まで知ってんだよストーカーかキメェわ普通に」
とツッコミ(本音)を言うとやっちまったって顔して視線を黒板に戻した。
別に。わかんねぇならわかんねぇで、それはそれでいいんだけど。
俺の斜め前の2個隣の席。そこにキモ川は座っていて、時々感じる視線がうざったかった。
⋯そうだ、好きなら時々相手のこと見るもんじゃねぇか?
前の席の奴(名前忘れた)も言ってたように。
なら、キモ川の視線をたどればいいだけだ。簡単じゃねぇか。
早速キモ川を監視し、授業中どいつを見るかを見張る。が、しかし授業中なだけあって、先生や後ろの席の奴をプリント配る時ぐらいしか見てない。
と思った瞬間、キモ川と目が合った。
お?と思いしばらく見つめてみる。
キモ川は目をぱちくりさせ口を開けたまま俺を見た後、すぐに黒板の方を向きノートをとる。
だんだん顔が赤くなって、しばらくしてシャーペンを置き両手で口元を覆ったあと、目だけそーっと俺の方を向いた。
もちろん、俺もガン見していたため当然のように目が合う。
わざとらしく俺が口角を上げると、キモ川は身体をビクッと震わせて、より一層顔を赤くさせる。
更には、驚いた時の揺れで机が傾き筆箱が落ちてバラバラになったシャーペンを慌てて拾う始末。
俺は、なんっかおかしくなって、気がついたら「ははっ」と声に出して笑っていた。
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