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固まる。(下川side)
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上谷くんが、時々近すぎて変になりそうです。
昨日も、ハンドクリームを塗るためだからとはいえ突然手を握られ、心臓がベテランの柔道選手に寝技をかけられたように苦しくなりました。
あんなに強く握られるとは思ってもみなくて、指と指の隙間までしっかりとゴツゴツした関節や、太い指の感触と体温がじわじわ染み込んできて、もう、呼吸すらままならない状態でした。
上谷くんはこわいです。
いつか僕の気持ちを見抜きそうで、恐い。
上谷くんが後ろの席なのは、嬉しいようで少し悲しいです。後ろだと見えないので、授業中横顔を眺めることも出来ないんだなぁと思うと寂しくなります。
前の席って、後ろから見られてるようで緊張するし、声も近いし、休み時間も気が抜けません。
そんなこんなで、今日もパシリ頑張ります。
「おいキモ川」
「へぁっ!はい!」
「ビクビクすんなよキメェな」
上谷くんはいつも通りの暴言を吐き捨て、僕の机に小銭をぽいっと投げた。
「なんか温かい飲みもん買ってこい。寒すぎて死ぬわ」
「わっ、わかった!」
小銭を握りしめ、自販機へと走る。コーンスープかお茶かコーヒーかで迷ったけど、上谷くんはさっきの授業中にお腹が鳴ってたのでコーンスープにした。
教室に帰ると扉の前に星くんが居て、走ってる僕を見つけると首に下げてあるカメラを向けた。
「星くん?どうしたの」
「今日も放課後撮りたい」
「いいけど、昨日もいっぱい撮ったのに⋯」
言いかけると、突然、扉がバシンと大きな音を立てて揺れた。
ビックリして目を向けると、扉に平手をついた上谷くんが立っていて。
「遅せぇよ」
「あっ、ご、ごめんなさっ⋯」
僕をじろりと睨んだ後、手に持っていたコーンスープをぶん取り自分の席に戻って行った。
「⋯下川、」
「あっ、ごめんなんだっけ」
「放課後、迎えに来る。待ってて。」
うん、と返事をし、星くんとバイバイして早足で上谷くんの元へ向かう。
「かっ、上谷くん、」
呼んでも振り向くわけもなく。
「おつり、これ⋯」
両手で恐る恐る差し出すと、目も合わさずにてのひらからお金を取り、何も言わずポケットにしまった。
またやってしまった、と落ち込む間もなく授業開始のチャイムが鳴り、急いで席に着く。
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