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高鳴る。
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上谷くんはいつも、怒ってる時は暴言を吐いたり舌打ちしたりする。
だけど今回は少し違う気がする。
それはもう不自然な程に、すごく、静か。
授業中はおろか、休み時間も昼休みも僕に何か命令することなく、それどころかなにも話しかけてこなかった。
今日は上谷くんが日直だから、日誌とか絶対「書け」って言われると思ってたのに。
それからの授業でも、いつもなら僕の椅子に無理矢理足を乗せてくるのに、「俺の分のノートとっとけ」すらもなくて。
あの上谷くんが、保健室で授業をサボるわけでもなく、机に伏せて堂々と寝ることもせずただじっと真面目に授業を受けている前代未聞さに不思議と背中が凍えます。
後ろからシャーペンの芯が紙と擦れる音が聞こえる。すごい。
すごい、恐い。
もしかして、このまま真面目な上谷くんが続いて時が来たら約束通りあのラブレターを返してくれたりなんかするんじゃないかな。
そうなるといいな。
五時間目は体育で、室内でバスケットボールをするとの事。
体育は本っ当に苦手中の苦手だけど、運動してる上谷くんを見るのが好きだから苦じゃない。
当然のように運動神経もいい彼は、特に球技が得意のようで、はたから見てもすごく楽しそうに動いている。
体操服で汗を拭く姿があんなに様になる人はいない。
思い出すだけで、心臓がきゅうってなる。
体育館へ向かう途中、星くんの大きな後ろ姿が見えたので、小走りして名前を呼んだ。
「星くん、」
あ、声小さかったかも。と思ったけど、思いの外届いたらしい。勢いよく振り向いた。
隣に並び、息を整える。
「⋯あ、そっちのクラスと合同なんだ」
「そうみたいだね」
ああ、こういうのってなんか。
こういうのを友達って呼ぶんだ。きっと。
少し前までは名前を呼んで駆け寄る相手も、肩を並べて歩く友達もいなかった。
それに比べて今は、なんて幸せなんだろうか。
嬉しくて、ムズムズする。
「あれ、下川バスケ好きだっけ」
「え!?好きじゃないよ⋯なんで?」
「ニヤニヤしてるから。」
「そうかなぁ⋯」
そりゃニヤけもするよ。
僕と友達になってくれてありがとう。
また「フフ。」と笑みを零すと、「カメラ持ってくればよかった」と呟く星くん。二人で足を揃えて、体育館に入った。
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