アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
落とす。
-
昼下がり、ギョッと体が硬直する。
......ない。
無い。どこにも、ない。
あの薄気味悪いラブレター、他人に知られてはいけないものがその薄っぺらい紙に長々と綴られてるっていうのに。
名前書いてないから、いや、書いてたとしてもそれはそれで駄目だけど!非常にマズイ事態です。これは、いかん。
待て待て待て、冷静になるんだ。
...落とした?移動教室は今日はなかったし、お弁当も教室で食べたし。
だとしたら鞄からずり落ちてるかも。
どうしよう、通学路、はたまた電車で落としたりなんかしてたら。
名前を書いてないとはいえ、恥ずかしさで前向いて歩けない。
誰かに助けを求めるように教室内をぐるっと見回す。
何も知らないで楽しそうに雑談を繰り広げるクラスメイトのなか、
視界の隅、信じたくないものが映ったんだ。
必ず視線の先にいるあの人、いや、僕が無意識に目で追ってしまってる。
僕の斜め後ろの2個隣の席、仲いいメンバー4、5人のなか、ひときわ輝いて見えるあの人。
その人が手にもってる、
あれ、何だ?
......紙だ。
5枚ほど、の...ルーズリーフ。
いやいやまさか、ルーズリーフなんてみんな使ってるものだろうし。
でもでもそんな、そんなまさか、
ある訳ないよ悪夢だよそんなの。あの人が手に持ってる紙が僕の物だなんて、悲劇過ぎて笑えないよ。
ないない、と首を左右に振って、もう一度あの人を見る。
と、今度は近づいてくるようにも見える。
にこにこ、憧れ続けてた笑顔がこちらに向いている。
見とれるしかない、そんな状況で彼はこう言い放った。
「これ、お前んだろ?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 39