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日本男児の心は様々
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学校内に俺の中で『庭』と呼んでいる場所がある。
実際、そこは本当に俺の庭ってわけではないのだが、大学敷地内で見つけた荒れ果てた花壇を綺麗にして花を植えたというだけのもの。
はじめは俺1人でやっていたが、ある日大学を休んで花壇を見に行けない時、水をやっていなかったはずなのに次の日その土が程よく湿っていたことから誰か知らないが手伝ってくれているのだと知った。
顔も、名前も、連絡先も知らないのに、まるで打ち合わせたように交互に世話を見ている。
種から花を咲かせ、またその種を植えるという作業を何回繰り返しているだろうか。
別に花が好きとかいうわけじゃないし、植えた花の名前だってろくに知らないのに、愛着がわいてしまった。
だから、
「………は?」
その花壇の真ん中の盛り上がっているところに一段と構える桜の木に寄りかかって寝ている奴を見た瞬間、怒りというより驚きが来た。
別に誰がどこで寝ようと薫以外どうでもいいが、花が心地よかったと思ってくれたのならなおいいが…………
「花!花踏んでる!!!」
すぐわかる高身長の男の下で、無残にも押しつぶされている花を見て、爆発しました。
それでも起きようとしないソイツ。
引きずり出してやろうかと考えたが、それでは花を踏まなければならないと思いとどまった。
ーどうにもできないじゃん!
「あーもー、起きろ!いい年してんなとこで寝るな!風邪ひくだろうが!」
いや違うだろ俺!
花のこと怒れよ、なんで心配なんかしてんだ。
大きな声で叫んだのが効いたのか、うっすらと目を開けたソイツと目があった。
瞬間、思わず息を飲んだ。
ーう、わ……。
なんつー美形。
こう、王子様とかじゃなくて……武士みたいな。
黒く短い髪に、睨みつけるような鋭い目。
身長は高くて痩せているのに、程よくついた筋肉。
ザ・日本男児。
「………」
寝ぼけているのかわざとなのか。
起き上がって俺を見ているにもかかわらず、その場から動こうとしない。
見とれていた……男に見とれていたというのも可笑しいが、急に我に返り
「ほら、そこどけって。花踏んでる」
やっとの事で本題を伝えた。
あまり表情を変えずに、それでも気遣ってくれているのか、長いコンパスを最大限に利用して花をあまり踏まずに外へ出てくれた。
ーあーぁ、元に戻るかな、あれ
地面についてしまっているの花びらを目にして、溜息が漏れた。
「………」
寝ていたヤツも俺の視線の先の潰れた花を見ている。
まぁ、とはいえせっかく気持ちよく寝ているところを起こしてしまったのだと、
「悪かった、起こして」
と、一応謝った。
「…別に」
「べ、」
別にってさお前………。
そこはお前も謝るとこだろうよ。
悪びれた様子もないソイツに、ばれぬ程度に小さくため息を吐いて、反省してないなと思った。
「もういいよ」
これ以上相手にしても無駄だと、俺も早々に諦めた。
少しは気にしているのか、しばらくそこにいたソイツも、後ろを向いて歩き出した。
あ、
「寝不足なら、はちみつオススメだぞ」
「………」
「別に嫌ならいいけど」
なんでそんなこと言うんだとでもいいそうな顔でこちらを見たので、なんとなくムッとしてそう言ってしまった。
視線を花壇に戻して、またため息。
ー結局謝らなかったしアイツ。
中身と外見まったく違うな。
外見は真面目そうな顔してるのに、何を考えているのか全くもってわからない。
「はちみつ、おすすめだったんだが……」
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