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調子狂います
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「買ってきた」
そう言って、戻ってきたイケメンははちみつとパンが入った2つの袋を持ち上げた。
……あぁ、見りゃわかるよ。
その様子に、帰らなくて正解だったと微かに胸をなでおろした。
「お疲れさん、じゃ、帰るわ」
そっけないって?
いやいや、早く帰らないと薫が待っているんだ。
了承は得ているものの、気になるものは気になる。
振り返って歩いているはずなのに、全く進まない体に疑問が湧く。
はて、どうしたのだ。
「って、お前かよ!」
俺の肩をがっしりとつかみ、行かせまいとする男。
思わずその手を軽く叩いてしまった。
あぁもう、なんて図だこれは。
きっと側から見たらおかしな光景だろうと、早々にここを立ち去りたい。
「なに?」
「………」
そして相変わらずの無口。
「……あの、俺帰りたいんだけど……」
そう言うと渋々手を離したが、これでスタスタと帰って行くのも気がひける。
何か言いたそうでもあるし。
え、まさかパンの塗り方とか?
さすがにそれはないだろう。
またじゃあなと言おうとした直前、イケメンがこれまたイケメンな声で言った。
「ありがとう」
と。
真顔で言うもんだから、俺の方変にがキョドッてしまった。
「あ、あぁ」
するともう行って良いとでも言いたいのか、肩から手を外した。
「えっと、……じゃあ」
妙な雰囲気の中、また、と言って薫の待つ家へと帰った。
「おーそーいーー!」
「悪い、ほんとごめんな?」
「もー、仕方ないなぁ」
玄関を開けると頬を膨らませた薫が迎えてくれた。
ー可愛い。
その頬を軽くつねって謝る。
「食べすぎてないか?」
「大丈夫だよお母さん」
だからなんでお母さんになるんだ。
薫は時々俺のことをからかってお母さんと呼ぶ。
まぁ、オカンみたいなことを言うからだろうが……どうも複雑な気分だ。
「すぐ作るから」
今のエプロンを着ながら慌てて台所へと入ると、その後に薫もついてきた。
「誰助けてたの?」
「んー、あ、」
そういえば、あの大学内にいただけで、名前も知らなければ、むしろ大学生なのかも怪しいものだ。
「知らないひと?」
不思議そうに薫が首をかしげる。
「いや、多分学生だと思う」
「わかんないの?」
「今日の昼初めて会ったんだ」
まぁ、最悪の出会いだったが、はちみつの棚で悩むイケメンを見ればどうでもよくなってきた。
「よくわかんないヤツだったけどな」
「?」
「でも、多分いいヤツだと思う」
「…………ふーん」
小さく口角を上げながらそう言うと、
興味を失ったのか、はたまた興味がなかったのか。
妙に空いた間の後一言そう言った薫は「良い匂い!」と俺の作っている料理を見てそう言った。
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