アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
誘拐されてますなう
-
濡れてしまった体を立ち上がらせながら、どうしようかと頭を抱える。
家に帰るべきなんだろうが、このままでは道行くたびに好奇の目にさらされるだろう。
歩けない距離ではないけれど、気乗りもしない。
「はぁ……」
ピザ屋から出るときは概に薫とその取り巻きはおらず、1人すごい視線を浴びながら出てきた。
「なんだよ、もう……」
俺悪くないし。
なんで一緒にいることを、兄弟だってことを顔で否定されなきゃいけないんだ。
薫は可愛い。
だから、似たようなことは度々あった。
特に高校生の時はひどかった気がする。
だから、慣れていると思っていた。
自分を否定されることも、こんな風に痛い目を見ることも。
なのになぜ、なぜこんなにも泣きそうになるんだ。
久しぶりで耐性が薄らいだのか。
あてもなくとぼとぼと歩きながら、もしかしたら薫がまだ近くにいるのではないかという馬鹿な期待を膨らませる。
「いやいや、俺は少女漫画の主人公じゃないっつの」
自分が虚しいわ。
しかし、あの店まだ新しくてよかった。
トイレに突っ込んだのにそこまで汚いっていう感じはしない。
いや汚いけどさ。
洗いたいんだよ早く。
「あーもー、どうしよ……う、?」
くい、と。
腕を掴まれて、軽く引かれている感覚。
いや、結構強い。
ーまさか、薫……?
そんな期待を抱いて振り返ると、
「…………、お前…、」
真顔で腕を引いているいわゆる「はちみつ男」
少し腕を引くものの、離してくれそうにないらしい。
「す、数日ぶりだな。どうした?」
「……」
こいつはあれか、口下手なのか?ただの無口なのか?
「手、どうしたんだよ」
「どうした」
「え、」
し、質問つもんで返されても困る。
「なんで濡れてる」
「……あ、あーいやこれは……」
トイレに突っ込みました。
なんて言えるわけもなく。
「おわっ、ちょ、なにっ!?」
目を細くしたと思ったら、握っていた腕をさらに強く握りそのまま腕を引いて歩き出した。
「家」
「ん?」
しかも足が長いから歩くのが早い。
黙り込むし。。
え、なに、俺どーなんの?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 92