アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
友情独占欲
-
友情に独占欲ってあると思う?
泣いている薫を迎えに、本来の目的地である大学に来て、そのままの足で「庭」へと向かう。
電話では薫は誰もいないと言った。
けれど、
「あ……」
薫の姿が視界に入ったとたん、足を止めた。
見えたのは、楽しそうに笑う薫と、その横に座ってるアイツ。
俺とアイツが初めて会った「庭」で、こんどは薫とアイツがであって、喋ってる。
「あ。あさにぃ!」
するとすぐに薫は俺に気づいて、笑って手を振っている。
その薫の視線を追って、アイツも俺を見る。
その目はいつもと変わらない。
鋭くて、睨みつけるような目。
けど、怖くはない目。
「さっき会ったんだ!な、泣いてたら頭ぽんぽんってして、慰めてくれてさ」
泣いていた、ということが恥ずかしかったのだろうか、言いづらそうに下を向く。
「俺だってするだろ」
と、別に対抗意識ってわけじゃないけど、いつものように薫の頭に手を乗せ、ぽんぽんっと跳ねさせた。
「うん。あさにぃみたいでなんか安心した」
「そっか」
可愛いこと言ってくれるな。
若干緩む頬を抑えようともしないで、じっと見ているソイツと目を合わせる。
服、まだ乾かしたまんまだ。
昨日借りた服を思い浮かべながら、口を開いた。
「ありがとな、こいつ俺の弟なんだ」
「……そうか」
「助かったよ」
「………」
無言になった俺らに、薫がずいっと入ってきた。
「あさにぃの知り合い?」
知り合い……?
あぁ、薫に言わなきゃな。
あの日人助けしてた人だって。
「あ………、」
なのになんで、あぁ、と言おうとした口が無意識に止まった。
「あさにぃ?」
そんな俺を不思議そうに見る薫。
「知り合いじゃないの?」
大きな瞳が俺を捉える。
捉えて、離さない。
「………」
俺ら2人の会話を、隣でずっと聞いているソイツは何もいう気配がない。
「………、違う」
なぜか、
「知り合いじゃないよ」
そんな言葉がでた。
友達、と言える仲でもないが、お互いに助け助けられた仲だ。
知り合いじゃないというには、近すぎるのに。
「……そーなんだ」
そう頷く薫の表情は読めない。
薫に、嘘をついてしまった。
俺ね、と薫は続ける。
「あさにぃのこと、信じるよ」
「……かおる……」
それはきっと、今朝のことだろう。
信じると言われて、嬉しい。嬉しいのに、嬉しいはずなのに、俺の心は余計に沈む。
嘘をついた俺を、薫は信じるという。
薫が信じてくれた俺は、最低なことをしている。
けど、だけど、これでいいのだとどこかで俺が言っている。
「……」
何も言わないお前は、眉一つ動かさない。
『とらないで』
取られたく、ないのだろうか。
名前も知らないくせに、嘘ついたくせに、俺はお前の友達だと抜かすのだろうか。
「薫、行こう」
なんだかいたたまれなくなって、薫にそう促した。
「え、うん。バイバイ、颯佑!」
ソイツに手を振った薫が発した言葉。
颯佑ーそうすけ。
名前、なのだろう。
名前を知りたいと思っていたのに、薫の口から知ってしまったことが、どこかひどくショックだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 92