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ブラザーズコンフリクト
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「あのさ、」
と、話題を変えてみた。
というより、これが本題だったけれど。
「この前、その……ごめん」
「何が」
不思議そうに俺を見る神凪だが、
何がって、そりゃあ、
「嘘、ついたから」
友達、まではいかないにしても、知り合いではあっまた。
普通に紹介すれば済んだことなのに。
「なんかつまんない意地はっちゃったみたいでさ。弟なのに、おかしいよな」
自分で言って、苦笑する。
そんな俺を一度見て、視線をずらして別に、と神凪は言う。
「別に、名前も知らなかったんだし間違ったことは言ってないと思うが」
「そ、かな」
フォローしてくれているのだろうか。
それともただ思ったことを言っているだけだろうか。
どっちにしろ、責める気はないようなのだが、どこか寂しい気もする。
「まぁ、なんというか、よろしくな?」
今更感は否めないけれど。
本当のことを言えば、これが大学初めての友達だったりするのだ。
それに浮かれているのはわかっている。
「……」
その無言は、肯定ととってもいいのだろうか。
「薫もよろしくな」
一瞬言おうか迷ったけれど、先に仲良くなったのは薫の方だし、そこは普通に。
『とらないで』
あぁ、確かに、大切になったもの、新たにできたものを取られるのは辛く寂しいのだろう。
薫も、そんな気持ちだったのだろうか。
あれ、とここでふと疑問に思う。
「……」
俺は、薫から一体何を取ったんだ?
これ以上というくらいまで、何を取っていたんだ?泣かせるくらいまで。
わからない俺は、相当最低な奴なのか。
「あのさ、人を傷つけたことを忘れてるって、どう思う?」
そう目の前の奴に聞いてみれば、
「……さぁな」
とだけ返ってきた。
ざわざわ、もやもやと心が揺れる。
俺は、大事なことを忘れている……気がする。
「あさにぃー!!」
遠くから、男の子にしては少し高めの薫の声が聞こえて、ハッと我に帰った。
「じゃ、薫が呼んでるから」
とその場を去って、頭の中のもやもやも振り払った。
「ブラコン」
小さかった神凪の言葉は俺に届くことなく、風の中に消えていった。
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