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奥の奥の、倉庫の中で
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「ね、あさにぃは学校行ってきて?」
次の日。
熱も下がってだいぶ元気になった薫は一応大事をとって今日も休むことにした。
俺も付いて休むと言ったのだが、それはダメだと薫は言う。
「もうほとんど大丈夫だから、行ってきなよ」
と、笑ってくれる。
自分のせいで休んでほしくないとでも思っているのだろうか。
ちなみに、風がうつったことは言っていない。
じゃあ、と渋々頷いて、
「ご飯きちんと食べて、ちゃんと薬飲めよ。
あんまり出歩いちゃダメだし、安静にしてろな?
何か食べたくなったら一応昨日のお粥の残り冷蔵庫に入れてあるから、温めて食べてくれ。
あとちゃんと戸締りもして……」
「わかった、わかったから!遅れるよ!」
まだまだ言いたいことはたくさんあるのだが、体を押されてそのまま玄関で、行ってらっしゃいと言われてしまった。
「………行ってきます」
正直、ものすごく不安だが、まぁもう薫も子供じゃないんだし。
過保護すぎるのも嫌われるかな、と。
歩きながら、大学への登校で薫がいないことなんてほとんどなくて、静かな道を1人進む。
あぁそうだ、神凪のところへ行ってみようか。
どうせまたアイツ「庭」にいるだろう。
「あっれー!!」
少し遠くで、大きな声がした。
けれどそれは、俺には関係のないことだろうし、第一話しかけてくる友達もいないのだから無視、というよりは普通に歩いていた。
「ちょっと無視しないでよ、あ、さ、ぎ、くーん!」
「え、……俺?」
がどうやら、標的は俺なようだった。
振り返ってソイツの顔を見ても、その周りにいる3人の人を見ても、見知った顔は1つもない。
人違いじゃないのか……。
いやでもこいつ亜沙樹って言ったし。
そうそうある名前じゃないよな。
「君だよ君、咲田亜沙樹くん」
いつの間に目の前に来たのか、見た目でチャラそうな男は俺の肩に手を回した。
「誰ですか」
忘れているわけではない。
本当に、知らないのだ。
思わず眉間にシワが寄る。
「人違いじゃないんですか」
俺あんたのことも、後ろにいる3人のことも知らない。
それとも、
「薫に用ですか」
だとしたら可能性は薫の友達だ。
たくさん、たくさんいるのだから。
んー、と目の前の男は笑う。
「まぁ、薫君とは知り合いだけど、用があるのは君」
「はぁ…」
「相手してあげようかなーって」
「は?」
いやいや、意味がわからん。
話が伝わってこないんだが。
「えー。とぼけるの?」
「いやごめん、ちょっと意味が……」
あれか、まさか1人でいるのが可哀想だから話し相手になってくれるというのか。
いや待て、それはあまりにも悲しいだろう。
まぁとりあえず、とそいつは言う。
「場所変えよっか」
と付いて行った先は「庭」のすぐ隣に設置してある狭い倉庫。
まぁ、花壇とかの手入れのための道具がしまってあり、俺もよくここを使ったりもする。
あ、もしかして一緒に花壇手入れしてくれるとか…
「あのさ、花見てくれんの?」
「はぁ?花?」
何それ、と笑い飛ばされた。
いつまでとぼけるのさ、とソイツは言う。
「いや、だって……」
とぼけるも何も本当にわからない。
ため息をついた男は自分の携帯を開き、これ、と見せてきた。
「あんただろ?アサギ」
「は、……っはぁ!?」
開かれていたのは、いわゆる出会い系というか援交サイト。しかも男用の。
そこに名前と、写真と、
「襲ってください」
の文字。
嘘だろ、いや、なんで…
俺こんなことしてない。
ふるふると首を振って、否定する。
「ち、がう。俺じゃない…」
「はい?だってこの写真あんただろ?」
「違う……」
そこには紛れもなく、俺の写真。
この写真、どこかで………
「あ、」
あの時だ。
朝からアパート前で薫の友達の2人にとられたやつ。
不意打ちで、撮られたやつ。
いきなりでバッチリカメラ目線な俺は、盗撮されたと言ってもだれも聞きはしないだろう。
「違う、俺じゃない…!」
だれも信じてくれないとわかっているのに、口から出るのは違う違うと否定のことばかり。
「いやいや、お前じゃん」
少しだけ雰囲気が変わった男に、逃げたほうがいいと本能が叫んだ。
「っ、」
勢いよく立って、ドアに向かったのに、風邪のせいかフラついた体が周りにいた3人に引っ張られた。
どたんっと、自分が倒れた音がどこか遠くで聞こえた気がした。
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