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コイバナ
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『とらないで』
暗闇の中に響くのは、まだ幼い口調の男の子の声。
なぁ、
『もうこれ以上、僕からとっていかないで』
お前は、誰なんだ。
なんで泣いてる。
なんで、俺の中にいる。
俺は…………、俺は?
「あんたなんか生まれてこなければよかったのよ」
わからない。
なぁ薫。
お前なら知ってるのか?
なんでこんなに、泣きそうになるんだ。
ー浅葱色は好きだな
…………、神凪。
もう俺と、話してくれないのだろうか。
どうしてだろう、すごく嫌だ。
あぁ、頭がいたい。
ガンガンする。
真っ暗闇なここから、出してくれ。
誰か、出してくれ。
「っ、」
はっと目を開けた時、急に入ってきた光にもう一度目を閉じた。
はーと、ため息を吐いて手を額に乗せた。
「疲れてるな」
どうも最近変な夢ばかり見る。
そういえば、とここはどこだろうかと辺りをを見回す。
倒れたところまでは覚えている。
ただ今ここがどこで、何時なのかがわからない。
「あら?目が覚めた?咲田君」
シャっとベッドを囲んでいた薄いクリーム色のカーテンが開いて、若いとは言えない白衣の女の人が顔をのぞかせた。
「あの、ここは?」
まだガンガンする頭に、さすがにまだ治ってないか、と考える。
「大学の医務室よ。背の高い男の子が運んできたの」
……神凪?
「名前、わかりますか」
「神凪君よ。わかるかしら?」
やっぱり、神凪。
運んでくれたのか。
まぁ、うん。優しいというより正義感強いもんなアイツ。
「俺、風邪ですか」
「まぁ、そうね」
そうですか、とため息が出る。
「にしても、珍しいわね」
スポーツドリンクを渡されながら、ベットの横の椅子に腰掛ける女医。
「なにが、ですか」
「前はここに寝に来てたのよ、神凪君。
少し前から来なくなったと思えば、いきなり男の子担いでくるじゃない。びっくりしたわ」
体温計を手渡されて、測れと促される。
「それにあんな焦った、というか表情が変わったのは初めてみるわねぇ」
「そうなんですか」
「あら、自覚ないのかしら?貴方がそうさせてるんじゃない?」
「いやいやまさか」
確かにいきなり目の前で倒れれば焦るだろうが、俺といる時もアイツ普通に無表情だし。
「俺といても無表情だし無口だし、なに考えてるのかわかりません」
「照れてるんじゃないかしら」
「はい?」
あの子口下手なのよ、と肩を震わせる。
「そっかぁ」
と、優しく笑いながら俺を見る。
「好きな子には案外奥手なのね」
「え、アイツ好きな子いるんですか?」
あんなヤツに好かれる女の子なんて、すげぇいいな。
………、いいな?
「いるんじゃない?年頃よ」
「……そんなもんすかね」
飲み干したスポーツドリンクの空を女の人に渡して、考える。
「咲田君恋とかしなかったの?」
あぁ、いくつになっても女性はこういう話が好きらしいと、思わず苦笑した。
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