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佐倉冬樹
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とはいったものの、だ。
記憶を探すなんて何すればいいんだ。
記憶喪失とかそんなんじゃない気がするんだよな。
ただ思い出せないだけって感じの。
でももう少しって。
薫…は、教えてくれないだろうし。
神凪もあまり教えてくれそうにない。
他に頼れる友達もいないし。
卒業アルバムは実家。
あそこに取りに帰るのはめんどくさいな。
薫と別れた後はなんとなく家に帰る気が起きなくて、アパートのすぐ裏にある公園のブランコに座り意味もなくゆらゆらと揺れていた。
時間帯が時間帯なだけに、小学生らはもう家に帰っているのだろう。
大人の人はちらほら見かけるが子供は人っ子一人いない。
「はーーーっ」
「ずいぶん長い溜息だね」
「っ!?」
決意して早々壁にぶつかるということに大きなため息を漏らすと、クスクスと笑いながら近づいてくる人がいた。
「さ、佐倉、?」
「久しぶり」
メガネをはめて若干タレ目な見た目からすごく優しそうな印象を受ける男。
いやまあ実際優しいのだが。
佐倉 冬樹。
クラスメイトではなかったが、同学年だったヤツ。数少ない高校の友達。というより知り合いに近い。
「変わってないね、亜沙樹君」
「佐倉こそ」
佐倉は頭が良かったから俺らよりももっとレベルの高い大学に入った、らしい。
「何しに来たの」
「友達に用事」
あぁなるほど。
ん、んん、なら佐倉なら知ってるかもしれない。
「なぁ佐倉」
「ん?」
「神凪って、高校にいたよな」
「神凪っていうと神凪颯佑?」
「そう」
そう言うと、クスクス笑いながら俺を見る佐倉。
「それ俺に聞く?」
「え?」
「1番知ってるのは亜沙樹君じゃん」
からかってるの?と聞かれる。
その言い方はまるで1番俺と神凪が仲が良かったみたいな。
「だってあんなに……………いや、」
「?」
「兄のせいかな」
「夏樹、先輩……」
佐倉の兄。
佐倉夏樹、それは高校の時俺が好きだった先輩。
告白して振られた先輩。
「いや、それは違う」
けれど、それは神凪とは関係ない…はず。
「その件に神凪は関係してないだろ」
「何言ってるの」
「え?」
心底不思議そうに佐倉は首を傾げた。
「颯佑と出会ったの、その時じゃなかったっけ」
「…………は?」
カチャンと、幾重にも重なる鍵の1つが音を立てた。
「まさか、忘れてるの?」
眉根を寄せて尋ねてくる佐倉に俺も眉根を寄せるしかない。
そんなはずないよとばかりに思っているようなその佐倉の顔が俺を追い立てる。
思わず、佐倉の腕を掴んだ。
「教えて佐倉。俺なんで神凪のことだけ忘れてるんだろう。神凪は、俺のなんなの…」
「………なにって、」
颯佑は、
「君と颯佑は恋人だったじゃないか」
カチャンと、また音がした。
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