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溺愛
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ー佐倉冬樹sideー
「ねぇ俺聞いてないんだけど!」
声を荒げて俺、佐倉冬樹は目の前の無愛想な男、神凪颯佑に詰め寄った。
公園で亜沙樹君に言った友達とはこいつのことだ。
「なにが」
椅子に座って本を読みながらうるさいとでも言いたげな顔で俺を見てくる颯佑にますます詰め寄る。
「さっき亜沙樹君に会った」
そう言えば、ピクリと颯佑の眉が動いた。
「そうか」
けれど返ってきたのはそれだけで、俺はますます混乱する。
どういうことかと問いただせば、なにがと無表情に返ってくるだけだ。
俺も、俺の兄貴も、高校のことも覚えている。
なのに、なのになぜ、
「お前だけあの子の中にいないんだ」
「……」
「しかもあの子のお前のこと神凪って呼んでるじゃん」
高校の時は、颯佑って名前呼びだったのに。
あんな嬉しそうに呼んでいたのに。
それは、と颯佑が口を開いた。
「俺がそうしろと言ったから」
「は?なんで」
「………」
また黙り込む颯佑に溜まった息を大きく吐き出した。
「わかった、うん何があったのかはわからんが何かあったのはわかった。
で、とりあえず確認したいのはお前の方だよ」
話があると突然呼び出された理由はこれだったかと今更ながら思った。
「お前亜沙樹君の事まだ好きなの?」
「……だから困ってるんだろ」
颯佑にしては珍しく感情的に、手のひらで目を覆い息を吐いた。
あぁ違うか。こいつはそうだ、亜沙樹君の事になるといつも感情的だった。
「何か心当たりは?」
お前が亜沙樹君の中から消えているその心当たり。
「ありすぎる」
なんだよあんのかよ。
そして、と颯佑は続ける。
「思い出せる方法もある……と思う」
「…わかってんならなんでしないの」
その手を使えば一瞬で解決するだろうに。
「今の亜沙樹が俺のこと好きじゃなかったら、思い出しても苦しむだけだろ」
「……え、はぁ?」
思わぬ言葉に思わず素っ頓狂な声が出た。
高校の時のこいつはどちらかというと無口なくせに強引なところがあった。
それで亜沙樹君とも仲良くなれたところもあると思うのだが。
というかさっきの公園の様子じゃ亜沙樹君、こいつのこと十分好きなような気もするが。
「思い出してからのことは亜沙樹君自身が決めることでしょ」
「……」
「お前はいいのそれで」
俺は嫌だよ。
あんなに仲がよかったお前らがまた笑い合うのが見たい。
「良いわけないだろ」
はーと長くため息が聞こえた。
眉間のシワがより深くなっている。
「為せば成る、か」
多分すぐに思い出せる方法を使わないのは、きっと話したこと以外に理由があるから。
ていうかそっちの方が重い理由だからだと思う。
「早くしないと取られるぞあの子。
なんだかんだ言ってスペック高いし、なんか癒されるし」
「……」
ほら、いじけた。
「お前と一緒にいた時の笑った顔なんてなぁ」
「……くそ可愛かった」
全くもってわかりやすいことこの上ない。
怒っているようなその顔とは逆に内心は思い出して笑っているのだろう。
それに小さく笑いつつ、本当大好きだよなぁと思う。
「お前将来ストーカーとかなるなよ」
「亜沙樹限定でなら楽しそうだな」
ククッと笑った颯佑に俺も笑った。
「冗談にしてくれよ」
ここは真顔で言っておいた。
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