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「あの……」
今の状況を理解しようと精一杯に頭を働かせるも、全く理解できない。
いや、1つだけ理解できるのは、ここが空き教室で俺と神凪の2人でいることだけ。
ことの発端は今日の昼食休みの時間。
薫と一瞬離れたその間に神凪と会い、手を引かれてここへ連れられてきたというだけのこと。
「神凪、お前何してるの」
そう問えば、また手を握られる。
「か、神凪?俺早く戻らないと薫が…」
心配するといおうとすると、俺は、と神凪が遮った。
「俺はお前に思い出して欲しい」
「……、」
思わず口を閉じた。
俺だって、思い出したい。
だけど、だけどそれができないから、怖くなるんじゃないか。
「できる」
「え?」
「俺ならできる」
多分、と小さく付け足した神凪の言葉にどうしてか本当にできるような気がした。
根拠なんて、ないけれど。
「目、見て」
言われて鋭く尖った神凪の目を見る。
その目には反射して映し出された俺の顔が見えた、
その目を俺は知っている。
俺を見つめる、俺だけを見つめるその神凪の目を知っている。
だってそれは、あいつのもの。
ーーの、もの。
スリ、と神凪の指先が俺の頬を撫でた。
それも、知っている。
いや、違う。
それだけじゃない。2人だけの教室、2人とも喋らない奇妙な空気、触れ合う手、絡み合う視線に頬に触れる指先。
全てがそっくりなのだあの時と。
あの時がどの時で何があったのかは、わからないけれど。
せり上がってくるのは愛しさとそれに似つかぬ激しい動悸。
俺は知っている。
この次に紡がれる言葉を。
神凪の口から発せられるであろうたった3文字だけの短い言葉を。
スゥッと神凪が息を吸った瞬間俺はゆっくりと目を閉じた。
そして言葉が出る前に目を開ける。
「好きだ」
ーガチャン
あと、1つ。
「お前が好きだ。好きで、好きで愛おしくてしょうがない」
俺の頬をゆっくりと指先を這わせながら言ったその瞬間に、
ガチャンと、1番大きな鍵が開いた。
世界が回る。
返事どころか神凪の言葉に反応すらできない俺は、巻き戻しのようにくるくると回っていく記憶に訳が分からなくなって、目眩がしてよろけた。
それをすかさず神凪が抱きとめてくれる。
「あさ」
そう紡がれる俺の名は熱くて甘くて、なぜ今まで気づかなかったのだろうと思ったほどだ。
「そうすけ、」
無意識に呼んだその名は呼ばれるのは嫌いだと言っていた神凪の下の名前。
それをして嫌われることを恐れたのに、今はするりとそうでた。
一瞬しまったと思ったけれど、目の前の神凪の顔が細い目をまた細くしてとても嬉しそうに笑うものだから何も言えなくなってしまった。
「思い出した?」
あぁそうだ。
そうだった。
お前は俺の、俺の大好きだった、
「…恋人」
呟いたのと同時にキツくキツく抱きしめられた。
神凪の肩に顎を乗せながら、目を閉じて思い起こす。
あの日のことを。
あの日々のことを。
俺と神凪颯佑のことを。
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