アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
誰がために 5
-
昼休みを告げるチャイムの音がなる。
それを聞いて俺はすぐに立ち上がって、2人分の弁当を持ち急いであの空き教室に向かう。
扉を開ければ、ほら、いつもの端っこの場所でいつものように突っ伏して寝ている神凪颯佑。
カタンッと神凪がて寝ている前の席の椅子をひき、向きを変え神凪と向かい合うように座る。
その音に気付いたのか、もそっと動いた神凪がゆっくりと体を起こした。
「おはよう、神凪」
「………………はよ」
笑って挨拶をすると、面倒くさそうに眠そうにそう返ってきた。
「弁当、食べる?」
「…………あぁ」
紺色の弁当箱と、緑色の弁当箱。
紺色が俺で、緑色が神凪。
顔の前にあげた二つの箱の1つを差し出す前に、緑色の弁当箱を取っていった。
こう、なんていうか、こっちが自分のって認識してくれているのはなんだか嬉しい。
蓋を開け、箸を取り出し食べようとする神凪をちょっと待てととどめた。
なに、とあからさまに不機嫌な顔になる神凪。
「いただきます」
俺は手を合わせてそう言った。
「………………」
「いただきます」
「…………めんどくさい」
「なら食べさせない」
「……………いただき、ます」
観念したかのように言ったその姿に、ふっと笑いをこぼす。
面倒くさい奴だって思われるかもしれないけどこういうのはちゃんとしないと気が済まないタチなのだ。
「この前の」
目線はこちらには向かず弁当箱に向かっていて、今日は一段と上手にできた……と思う卵焼きを取りながら神凪が口を開いた。
「あれ、美味かった」
「あれ?」
「ちっちゃい魚の奴」
「あー、佃煮」
「そう、それ」
聞けば家で全部食べてしまったらしい。
「ご飯と合うだろ、あれ」
「………?」
「え?」
なぜか不思議そうな顔をした神凪に、あれと顔が引きつった。
どちらかというと佃煮とかってご飯とかに乗せて食べるよな、、な?
「おやつ」
「うん?」
「学校から帰ったあとに食べてた」
「それだけで?」
「あぁ」
なんてことだ。
これならご飯と一緒に食べるものだと教えたほうがまだよかった。
そんなことはつゆしらずとばかりに、遊び半分で入れたタコさんウインナーを頬張る神凪。
「ご飯と一緒に食べたら、もっとよかったと思うんだけど」
俺もそのつもりで少し濃ゆめに味付けしてたし。
「なら、」
「なに?」
「また、作ってくれるか」
「お、………おう、もちろん!」
また作ってくれと言われるとは思っていなかった。得意料理なだけに、褒められ、てはいないのだが嬉しい。
ぱたん、と2人とも弁当を食べ終え蓋を閉める。
「今日も美味かった」
「いーえいーえ、お粗末様です」
ご馳走様でした、と手を合わせて言えば、おずおずとご馳走様でしたと聞こえまた笑いが漏れた。
また突っ伏する神凪に尋ねる。
「寝る?」
「眠くなったら」
「じゃあ、俺も少し寝ようかな」
昼休みはまだ沢山残っている。
することもないし、日当たりもいいし、神凪を見ていたら余計眠たくなってきた。
俺は椅子を元に戻して元の机で寝る気だったのだが、俺も寝ようかなと呟いた時机の8割覆っていた神凪の腕が半分くらいまで下がった。
「?」
この隙間はなんだろうか。
固まっていてると、神凪は目だけ俺を見てくぐもった声で言った。
「寝るんだろ」
「え、あ、うん」
俺のために、どけてくれたのか。
弁当箱を横の机に置き、神凪と向き合うように突っ伏した。
狭い机に2人なのだから、その距離は近い。
目の前に神凪の短い髪があって、思わず指で触ってしまった。
「……………なに」
もう寝てしまっていたと思っていたが、起きていたらしい。
「なんとなく」
「意味わかんね」
嫌がられたのかと思ったが、触っている俺の指を退けるのでもなく。
ただ面倒くさいだけかもしれないが、なされるがままされていた。
ふわりとどこからか吹いてきた柔らかな風が頬を撫でた。
それと同時に、ゆっくりと下がってきた瞼に逆らうことなく誘う夢に身を任せた。
「颯佑ーー!!、やっぱりここに、い…た……」
「………うるさい」
昼休みの中ごろ、俺がもう寝てしまったその後に響いた声に神凪颯佑は眉根を寄せた。
「え、だれその子」
同じく神凪の横まで来た男、佐倉冬樹はスヤスヤと眠る俺を指差しそう言った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 92